焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもアピール 移民取り締まりへの不満背景
米首都ワシントンの議会議事堂。2月4日撮影。REUTERS/Kylie Cooper
Helen Coster Joseph Ax
[17日 ロイター] - 米アイオワ州議会上院の議員でルーテル教会の牧師でもあるサラ・トローン・ガリオット氏は、選挙戦の中心に信仰を据えることをいとわない。
民主党の同氏は、宗教的な教義を明確に訴えて11月の中間選挙で連邦議会選に立候補する。今年は彼女のような民主党候補が異例の数に上り、民主党としては、共和党支持層であるキリスト教徒有権者の一部を引き剥がせると期待をかける。
キリスト教徒の有権者は長年、共和党にひかれる傾向にあった。しかし一部の専門家は、第二次トランプ政権の政策、特に不法移民の取り締まりが、民主党につけ入る隙を与えるかもしれないと言う。
今回の民主党候補者の中には、自身が聖職者であったり、聖職者になるために学んでいたりする人物が何人かいる。
進歩主義的なキリスト教政治団体「ボート・コモン・グッド」を運営するダグ・パジット牧師によると、今年は過去よりはるかに多い10人以上の宗教的指導者が民主党から連邦および州のポストに立候補している。トローン・ガリオット氏もその一人だ。
<無宗教の支持基盤>
過去に民主党から出馬した多くの宗教指導者とは異なり、今年の候補者らは、歴史的に民主党の支持基盤であった黒人教会コミュニティの出身ではない。
こうした候補者らは数十年来の流れに逆らおうとしている。民主党で連邦議会議員を務めた最後の白人聖職者は、40年前に退任したボブ・エドガー下院議員だとみられる。
カトリック信者であるバイデン前大統領が信仰についてしばしば語ったように、過去にも著名な民主党員が自身の信仰に言及したことはあった。しかし、専門家によると、今回の候補者らは信仰を明確に政策課題と結びつけている点で、過去とは一線を画している。
ノートルダム大学の政治学教授、デビッド・キャンベル氏は「候補者が宗教的な場合、ほとんどの有権者はその人物が共和党員で、非常に保守的だと想定する」と説明。「今起こっているのは、民主党員の少数グループが左派的課題を語るのに宗教的な言葉を用いているという現象だ」と話した。
このアプローチにはリスクも伴う。ワシントン大学ダンフォース宗教・政治センターのライアン・バージ教授の分析によると、2024年の大統領選でトランプ氏は、白人福音派有権者の得票率が83%と過去最高を記録したほか、主流派プロテスタントとカトリックの双方からも過半数の支持を得た。
一方で、民主党の支持基盤はますます無宗教化している。ピュー・リサーチ・センターによる2023―24年の大規模調査では、民主党支持者の40%が「宗教を持たない」と回答し、この割合は2007年の2倍以上に達した。
ノートルダム大学のキャンベル教授は「民主党の候補者にとって、これはハンドルさばきが非常に難しい道だ。宗教になじみの薄い非常に世俗的な支持層を一方に抱えつつ、もう一方では宗教的な言葉に親しみを感じ、投票先が決まっていない多くの穏健な有権者が存在するからだ」と語った。
共和党下院選挙委員会の広報担当者マイク・マリネラ氏は、宗教的な民主党候補者が共和党の支持基盤を脅かす可能性を一蹴。「共和党が選挙のたびに信仰を持つ有権者から圧倒的支持を得てきたのは、我々が常識を貫いているからだ。対照的に、民主党は自らの信仰とかけ離れた、過激でリベラルな願望リストを押し通そうとしている」と話した。
<信仰と政策>
ルーテル教会の信徒で、アイオワ州知事候補のロブ・サンド氏は、自身が民主党員になった大きな理由として「キリスト教の信仰とは、立場の弱い人々を思いやることにほかならないからだ」と話す。「これが必勝の戦略だと思っているわけではない。ただ、このことに触れずに活動を進めることはできない」
サンド氏は信仰を語る他の民主党候補と同様、同党にとって最も舵取りが難しい宗教的課題の一つである「中絶の権利」支持と自身の信仰を結びつけている。
2022年に最高裁が中絶を認める憲法上の権利を覆して以来、この問題はある意味で、共和党による攻撃材料から民主党にとって有利な材料へと変化した。
アラスカ州の民主党候補、マット・シュルツ氏は、キリスト教の教典は人間の生命がいつ始まるのかを明確にしていないと指摘。その上で、共和党は医療の改善や避妊具へのアクセスなど、中絶を実際に減らすための手段に反対していると論じた。
「私はキリスト教の信仰に反してではなく、むしろ信仰があるからこそ、中絶の権利擁護の立場をとっている」
<喪失と悲しみ>
ミネアポリスで、強硬な移民取り締まりに抗議していた看護師アレックス・プレッティさん(37)が連邦捜査官に射殺された数日後、シュルツ氏は教会の説教壇に立ち、「殺人」を批判した。同氏はロイターに「これこそが現政権がもたらした果実だ。すなわち、殺人、涙、喪失、そして悲しみだ」と語った。
トランプ政権の移民対策に、一部の宗教団体は厳しい目を向けている。特にミネアポリスでの市民射殺事件以降、その傾向は顕著だ。
トローン・ガリオット氏は「(イエスは)見知らぬ者を温かく迎え、飢えた者に食べ物を与え、弱者のために立ち上がり、貧しい人々を思いやった。それこそがキリスト教徒としての私たちの使命だ」と言う。「そして今、人々が目にしているのは、コミュニティーが恐怖に陥り、人々が残忍に扱われている姿なのだ」
また、宗教的な民主党候補者の多くは、貧しい者や苦しむ者を思いやれ、という聖書の教えを強調し、経済的正義にも焦点を当てている。このことは、中間選挙の争点の中心に「生活の負担軽減(アフォーダビリティー)」を据えようとする民主党の戦略と一致している。
民主党・下院選挙対策委員会の幹部を務めるケンタッキー州選出のモーガン・マクガーベイ下院議員は「私たちに食べ物はあるか、医療はあるか、住居はあるか、そしてわが国の移民・税関捜査局(ICE)は人々の権利を尊重できているか」と述べ、選挙の争点を強調した。
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