最新記事

アメリカ社会

米NY州、全米ライフル協会の解散求め提訴 幹部らが多額の資金流用か

2020年8月7日(金)11時35分

ニューヨーク州のジェームズ司法長官は6日、全米ライフル協会(NRA)の幹部らが個人的な使途のために多額の資金を流用したなどとして、協会の解散を求める訴えを起こした。インディアナ州インディアナポリスのNRA年次総会で昨年4月撮影(2020年 ロイター/BRYAN WOOLSTON)

ニューヨーク州のジェームズ司法長官は6日、全米ライフル協会(NRA)の幹部らが個人的な使途のために多額の資金を流用したなどとして、協会の解散を求める訴えを起こした。

NRAは米国で最も規模が大きく、影響力を持つ銃関連圧力団体で、与党・共和党の支持団体。ニューヨーク州に非営利団体として登録しているため、同州の法律が適用される。

訴訟の対象となったのはNRAと、ウェイン・ラピエール氏ら幹部4人。ラピエール氏はNRAのバイスプレジデントを務め、約30年にわたりNRAを率いてきた。

ジェームズ長官は、NRA幹部らはバハマへの家族旅行やプライベートジェット機、高額の食事などに資金を使用したと指摘。3年間で6400万ドルに上るこうした支出でNRAの収支は赤字に転換したとし、州法や連邦法のほか、NRAの内規にも違反していると述べた。

また、首都ワシントンの司法長官も、事前目的の資金を不正使用したなどとして、NRAを提訴した。NRAは登録はニューヨーク州だが、本部はワシントン近郊のバージニア州フェアファックスにある。

NRAは提訴について「根拠がなく、周到に用意された攻撃だ」と非難。ジェームズ長官がNRAの言論の自由を否定したとし、同長官に対する訴訟を連邦裁判所に起こした。

NRAのプレジデント、キャロリン・メドウズ氏は「この戦いで萎縮することはない。NRAは対抗し、勝利する」と述べた。

民主党員のジェームズ長官は会見で、NRAがトランプ大統領を支持していることが提訴の理由ではないと述べた。ただ今回の訴訟を受け、米国の二極化が一段と進む恐れがある。

トランプ大統領はNRAがニューヨーク州などに提訴されたことを受け、銃愛好家が多いとされるテキサス州に拠点を移せばいいと述べた。その上で「極左のニューヨークがNRAを滅ぼそうとしているように、(民主党の)バイデン前副大統領が大統領選挙で当選すれば、(武器保有の権利を認める)憲法修正第2条の機会はなくなる。銃は直ちに取り上げられる。警察も銃もなくなる!」とツイッターに投稿。この問題を11月の大統領選の争点の一つにする姿勢を示した。

銃規制団体の「Everytown for Gun Safety」や「Moms Demand Action」などは「これまで長年にわたり、NRAの腐敗について警告してきた」とし、訴訟に支持を表明。両団体は民主党の大統領候補指名争いに一時参加したマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長から資金提供を受けている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、10月は前月比・前年比とも伸び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中