最新記事

日本政治

史上最長2799日、政治遺産なき安倍政権 自民内ではポスト安倍に思惑交錯

2020年8月24日(月)11時36分

連続在職日数で歴代最長を達成した安倍晋三政権は、首相が目指す憲法改正など大きな政治遺産は残せていない。写真は5月、首相官邸で記者会見する安倍首相。代表撮影(2020年 ロイター)

24日に連続在職日数で歴代最長を達成した安倍晋三政権は、首相が目指す憲法改正など大きな政治遺産は残せていない。逆に足元では新型コロナウイルスや東京五輪の延期など、新たに背負った負の遺産の対応に追われている。支持率が過去最低水準まで落ち込み、体調不安もくすぶる中、永田町では早期退陣や解散・総選挙、ポスト安倍を巡ってさまざまな思惑が交錯している。

憲法解釈変更で集団的自衛権

安倍首相の連続在任日数は24日、2012年12月に再登板してから2799日が経ち、これまで最長だった佐藤栄作首相を抜いた。

この間、安倍首相はデフレからの脱却、ロシアとの間に横たわる領土問題、北朝鮮からの拉致被害者奪還、憲法改正、軍事力の強化と、過去の政権が成し遂げられなかった課題の解決に乗り出してきた。

しかし、物価は目標の2%に届く気配がなく、新型コロナの感染拡大による景気後退で絶望的な状態にある。「シンゾー」、「ウラジーミル」と呼び合ってきたロシアのプーチン大統領との協議は今や停滞、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長とはいちども会談できていない。

軍事力の強化は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊が日本の域外で武力を行使することに道を開いた。しかし、第一次政権時から高く掲げてきた憲法改正にまでには踏み込めず、自衛隊を軍隊と位置付ける目標は果たせていない。

「明確な政治的レガシー(遺産)を残せていない」と、時事通信の元解説委員で、政治評論家の原野城治氏は言う。「自主憲法の制定は結局できなていない。外交面でも日中関係は最悪な状態、日韓もにっちもさっちも行っておらず、日ロも八方塞がりだ」

反転の兆しない支持率

一方で、全国に配布した「アベノマスク」、欧米などが打ち出した都市封鎖(ロックダウン)とは異なるあいまいな非常事態宣言、感染拡大が収まらない中での旅行・外食奨励策「GO TOキャンペーン」の実施といった一連のコロナ対策は、国民からの評判が芳しくない。

毎日新聞が22日に実施した世論調査によると、内閣支持率は34%と前月比2ポイント上昇したが、第2次安倍政権発足以来最低水準が続いている。不支持率は59%と高止まったままだ。

これまで安倍政権の支持率は、国会会期中に森友・加計学園問題などスキャンダルが起きて低下しても持ち直してきた。しかし、今年は国会が閉会し、公の場で野党に追及されなくなった6月中旬以降も反転する兆しが見られない。ある自民党幹部は、「コロナによる景気悪化、雇用悪化が理由」と話す。

与党内では、任期満了前の安倍首相辞任を望む声も聞かれるようになってきた。「首相が安倍さんのままでは衆院選は厳しい。首相交代、閣僚の若返りなど踏み切らないと自民党の支持率回復は難しい」と、別の自民党幹部は言う。

コロナ問題が落ち着くことを前提に、年末にも首相が退陣し、総裁選を実施したうえで、年明けに衆院解散とのシナリオも一部で浮上している。一方で、コロナ収束までには時間がかかり、来年10月の衆院任期間際まで解散は困難との見方もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月の米雇用、民間データで停滞示唆 FRBは利下げ

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、政府閉鎖の

ワールド

ハマスに米ガザ和平案の受け入れ促す、カタール・トル

ワールド

米のウクライナへのトマホーク供与の公算小=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中