最新記事

中国

アメリカ猛攻──ファーウェイ排除は成功するか?

2020年7月27日(月)11時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

英、5Gからファーウェイ排除 Matthew Childs-REUTERS

7月24日、EUは5G調達先の多様化に向け措置を講じる必要があるとしファーウェイ排除を示唆した。14日にはイギリスがアメリカの圧力を受けて2027年までのファーウェイ撤退を宣言したばかりだ。

ヨーロッパにおけるファーウェイ排除は進むか

7月24日のロイター電によると、EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会が「EU加盟国は次世代通信規格5G機器の調達先の多様化に向け、直ちに措置を講じる必要があるとの見解を示した」とのこと。となれば、ヨーロッパにおけるファーウェイ排除の動きが進む可能性がある。

というのは、アメリカからの強烈な圧力を受けて、イギリスは7月14日に「2027年までにファーウェイを完全に排除する」と発表しているからだ。

フランスも事実上排除する方針であると、7月22日のロイター電が伝えている

もっともフランスの場合は、あくまでも「関係筋」ということで正確な情報ではないが、イギリスの場合は「右往左往」しながらも、政府筋が明確に意思表示している。

イギリスの場合

イギリスは今年1月の段階では、まだファーウェイの通信インフラを部分的に認めていた(サプライヤーに留めるものの、シェアに上限を設けることで合意していた)。

しかし今年5月にアメリカがファーウェイの半導体チップの製造に制限をかけるという新たな制裁を打ち出すと、イギリスは態度を変え始めた。

7月13日付のロイター報道によると、ファーウェイはイギリス政府が同社を5G通信網から排除する可能性があることを知ると、ジョンソン首相との会談を要請したとのこと。排除の時期を2025年6月のイギリスの総選挙後に延期することを求めたようだ。そうすれば新しい政権は別の選択をするかもしれないと考えたと中国メディアは伝えている。その結果、2027年まで延期することが決まったという経緯がある。

その代わりにファーウェイは、イギリス国内で使われているファーウェイ製品をそのまま維持することを確約した。すなわち、2G、3Gおよび4G通信網でも使われているファーウェイ製品は撤退しないということだ。

しかしこれは、逆の見方をすれば、アメリカの制裁は今後の(未来の)設備投資に関わるものであることを利用して、2Gや3G、4Gに使われているファーウェイ製品については「安全保障面での判断はしない」とイギリス政府が「逃げた」と解釈することもできなくはない。

既に5Gに関するインフラを購入している企業や組織にとっては、今から基地局を取り換えたり、エリクソンやノキアなどの他の企業のものを購入し直したりしなければならないのでコストがかかり、5Gの運用も、その分だけ遅くなってしまう。だから本当はファーウェイを追い出したくないが、アメリカの言うことを聞かないと「よろしくない」というお家の事情もあることが透けて見える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減との報

ワールド

トランプ氏、USMCA離脱を来年決定も─USTR代

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 10
    白血病細胞だけを狙い撃ち、殺傷力は2万倍...常識破…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中