最新記事

中国

アメリカ猛攻──ファーウェイ排除は成功するか?

2020年7月27日(月)11時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

つまりEUを離脱したイギリスとしては、アメリカとの通商協定を結びたいという思惑があるようだ。

中国を選ぶかアメリカを選ぶかを天秤にかけた時に、アメリカを選んだ方が今は賢明だと考えたのだろう。何といっても中国は香港国家安全維持法を通してしまったのだから、ここはアメリカを選ぶしかない。

李嘉誠の存在も要注意

安全弁として作用しているのは香港の大富豪・李嘉誠の存在だ。

李嘉誠はそもそも、早くから「イギリスの半分を買っている」と言われている。イギリスの鉄道、通信、水道、電力供給、ガス流通などへの投資により、イギリスのガス供給市場の30%、通信市場の40%以上、電力流通市場の約25%を李嘉誠が支配している。そして通信において、李嘉誠はファーウェイを選んでいるのである。貧乏のどん底から這い上がってきた戦友のような感情を李嘉誠はファーウェイの任正非CEOに抱いているのだ。

今般も何やら怪しい動きを見せた。

今年7月23日夜、李嘉誠一族が所有する長実グループは、成都の「南城通匯」プロジェクトを総額約10億1200万米ドルで売却したのだと中国メディアが伝えている。それをどこに投資するのか、彼の今後の動きには注目した方がいい。

ファーウェイへの半導体提供ルートを断ち切ったアメリカ──背後には巨大な構想が

今年5月15日(アメリカ時間5月14 日)、世界最大の半導体ファウンドリ(受託して半導体チップを生産する工場)である台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.、台湾積体電路製造)が新たな生産拠点をアメリカのアリゾナ州に置くことを発表した。

トランプ政権はファーウェイへの輸出規制を強化すると発表したが、アメリカの要望どおりTSMCは、2020年9月以降はファーウェイに半導体を提供しないことになった。

同年5月20日に台湾の蔡英文総統の二期目の就任式があったが、彼女は就任演説で「今後4年間で台湾が向き合うのは、世界経済の劇的な変化とサプライチェーンが根本的に再構築されていく局面だ」と述べた。サプライチェーン再構築の中には、このTSMCがあり、それを念頭に置いていたと考えていいだろう。

トランプ政権は猛然と中国依存から脱却すべくサプライチェーンを切断しようとしている。

TSMCはファーウェイの子会社であるハイシリコンがデザインした半導体の製造を受託して、その製品をファーウェイに販売し、ファーウェイはそれを使って5G製品を生産している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中