最新記事

東南アジア

インドネシア良物件「美麗な花嫁付き土地」! FBに不動産広告、条件は「双方の合意」

2020年7月26日(日)11時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

イスラム教の一夫多妻制の影響も

こうした女性の結婚と関連した不動産や財産などの付加価値は「女性に付加価値が付いてくるのか、付加価値に女性が付いてくるのか」とその判断に迷うところではあるが、インドネシアの女性団体や人権組織などからはこれまでのところ「女性を売り物にする人身売買の側面がある」とか「女性蔑視、差別の助長になる」などという手厳しい反発は不思議と起きていない。

それというのもインドネシアは10歳台後半で結婚、出産、離婚を経験して「幼い子供を抱えて仕事をする若い女性」が圧倒的に多い。日本でも同様の例はあるとはいえ、「理想的な結婚」に「財政的に不自由のない裕福な男性」を求めて、結婚によってそれまでの生活環境を一変させたいという願望がインドネシア人女性の間には相当に根強くある。

そうした多くの女性が抱く「普遍的な理想」に加えて、人口2億6700万人の約88%を占めるイスラム教徒女性としての宗教的側面もあるとの指摘もある。

イスラム教は「一夫多妻」を認め、妻を4人まで娶ることが可能とされている。ただそれは男性に対して「全ての妻をあらゆる面で平等に扱う」「第2夫人との結婚には第1夫人の了承が求められる」などの条件をクリアしなければならないとされている。

イスラム教徒の一夫多妻は元来「戦禍で夫を失った女性の救済」という社会的な意味合いを負っていたもので、それゆえに「女性差別や人権侵害」が入りこむ余地はないといわれている。

そうした社会の中で若くして子供抱えて寡婦となったり、中年まで結婚の機会に恵まれなかったりした女性にとっては「第1夫人でなくてもいいから、財政的責任と庇護を与えてくれる男性」を求めることがイスラム教徒女性としての安定した生活への鍵であり、近道となるといえる現実がある。

そのためには「土地や家などの不動産といった付加価値を伴う結婚」つまり「嫁入り道具のひとつ的感覚」で相手への負担を減らすことで、ハードルを下げて「幸福を追求したい」というイスラム教徒の「女心」の表れとも解釈できるというのだ。

2015年のウィナさんのケースは男性の側が既婚であることを隠して結婚しようとしたことで破談となった。今回のデウィさんの場合は相手の男性に対して「責任と愛情」以外の女権を提示していないが、男性にとっての第2夫人という立場でもいいのかどうかは明らかになっていない。

メディアからの過去2回の離婚原因に関する質問に関してデウィさんは過去の問題に触れたくないのか一切コメントしていないというが、インドネシアの各メディアはそんなデウィさんに「白馬の王子」か「玉の輿」が出現するのを待ち構えている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


【話題の記事】
・コロナ危機で、日本企業の意外な「打たれ強さ」が見えてきた
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中