最新記事

教育

「素手でトイレ掃除」を美談にする日本の不思議さ ドイツ出身の私が驚いた「異常すぎる校則」

2020年7月22日(水)12時48分
サンドラ・ヘフェリン(コラムニスト) *東洋経済オンラインからの転載

私が通っていたのは、ギムナジウムという将来は大学進学を希望する生徒向けの学校でしたが、同級生は成績優秀であっても、当時はやりの膝がビリビリに破れたジーンズを穿いて登校していましたし、イヤリングもサイズが大きい大人びたものをつけていました。

一方、日本から送られてくる中学生向けの雑誌には「校則に縛られる生徒たち」という別世界のことが描かれており、自分なりにいろいろと感じるものがありました。

日本の雑誌で読んだ衝撃的な校則についてドイツ人の同級生に話そうとしても、ドイツの学校には校則そのものがないため、うまく説明できませんでした。「日本の学校には細かいルールがあって......」と言いかけると、なんだか遅れた国の話を聞いているかのような目で見られ、複雑な心境になったことを覚えています。

もしかしたらドイツの学校にも、規則が書かれた紙というか文書は校長室などに保管されているのかもしれません。しかし、なにせ生徒手帳なるものがないため、私の知る限り生徒がそれを確認したことはありませんでした。校長先生などにお願いすれば、学校のルールが書かれた紙を見せてもらえるのかもしれませんが、大きな話になってきそうです。

結局、筆者がドイツでギムナジウムに通っていた9年間、「これが学校のルールです」と紙を見せられたことはありませんし、口頭で身だしなみなどに関するルールを告げられたこともありません。当然ながら、「学校の規則についてもっと知ろう」とワザワザ職員室に確認しに行く生徒も皆無でした。

ドイツでは「身だしなみ」はノータッチ

もちろん無断の欠席が続いたり、宿題をやらなかったりといったことは記録に残るし、それに対する対応は厳しいのですが、生徒の身だしなみだとか学校の外での生活態度についてドイツの学校は基本的にノータッチなのです。

こういったことが可能なのは、ドイツでは「学校は勉強をするところであり、子どもの人間教育は家で親がやるもの」といういわば「すみ分け」ができているからです。

日本の学校の給食といえば、単にランチを食べる、という意味合いだけではなく「食育」の要素もあります。実は私はこの日本のスタイルが好きなのですが、やはりドイツの学校で食事を通して生徒に食育をするのは難しいと思います。というのも、ドイツでは食事について「個」や「各家庭の方針」が尊重されているため、全員の生徒に「好き嫌いなくバランスよく食べましょう」などと教えることは難しいからです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 8
    三船敏郎から岡田准一へ――「デスゲーム」にまで宿る…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中