最新記事

2020米大統領選

前回選挙で成功した「集会戦術」に執着するトランプ 世論と合わず「空回り」

2020年7月15日(水)10時47分

裸の王様

確かにトランプ氏は前回選挙で、人種や宗教の面で社会の分断化をあおったことが当選の一因になった。こうした作戦を通じて、無党派層で7%ポイント、高齢者で13%ポイント、学歴が大卒未満の有権者で29%ポイント、大卒白人男性で1%ポイント、白人女性で13%ポイントのリードを確保したのだ。

16年の本選当日にロイターが調査したところでは、トランプ氏に票を投じた人の26%が、初めて選挙に来たか、12年には民主党のオバマ前大統領に投票していた。トランプ氏としては、今回もこれらの有権者を取り込む必要がある。

ところがかつてのトランプ氏のアドバイザーの1人は、今年は事情が違うのだということを「トランプ氏以外の誰もが」感じ取っていると述べた。世論調査でもそれは明らかで、トランプ氏は無党派層だけでなく、白人男性や白人女性、高齢者でも支持を失っている。

別の関係者の話では、16年のアドバイザーの何人かがここ数週間でトランプ氏に連絡を取り、挑発的な言動をやめて2期目のための代わりの戦略を練るよう説得しようとした。つい最近には前ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏が、そうした目的でトランプ氏にメモを送付したという。

一方でトランプ氏は、過去1週間でも国内の「伝統主義・保守主義者と進歩主義・自由主義者の文化的な対立」を強調しあおり続けた。ラシュモア山の記念碑の集会に続き、4日の独立記念日のホワイトハウスでの演説でも、人種差別の象徴とみなした銅像を破壊したデモ隊を非難。6日には自動車レース主催のNASCARが南北戦争当時の南軍旗使用を禁止したことをやり玉に挙げた。黒人レーサーの車庫から人種差別を想起させる縄が見つかった問題については、捜査で結局事件性がないと判断されたことで、レーサーは「謝罪」すべきだと訴えた。

ホワイトハウスの元高官は、トランプ氏がこうした挑発的な物言いをするため、残された戦略として最も有効な、バイデン氏に「リベラル過ぎる」というレッテルを貼る取り組みが台無しになっていると分析。本選まであと4カ月となった今、トランプ氏陣営にとってこのレッテル攻撃がとっておきの切り札なのに、陣営はこれをあまり上手にやっていないとみている。


【関連記事】
・イエス・キリストは白人から黒人に戻る?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・「ベートーベン黒人説」の真偽より大事なこと
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UBS海外部門、7年で段階的資本増強へ スイス政府

ビジネス

米の医薬品関税、EUは上限15%ですでに取り決めと

ビジネス

東証がグロース市場の上場維持基準見直し、5年以内に

ビジネス

ニデック、有価証券報告書を提出 監査意見は不表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性を襲った突然の不調、抹茶に含まれる「危険な成分」とは?
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 5
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 6
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 7
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 8
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 9
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 10
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中