最新記事

事件

米ミネアポリス黒人男性の拘束死 動画は訴追された同僚警官へ有利に?

2020年6月8日(月)17時35分

米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官から首を圧迫され死亡した事件で、免職となった元警官4人が訴追された。写真はホワイトハウス前で抗議する人々(2020年 ロイター/Erin Scott)

米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官から首を圧迫され死亡した事件で、免職となった元警官4人が訴追された。一部の法律専門家によると、事件の様子を映した動画が証拠となって、殺人ほう助・扇動の疑いで訴追された3人に自己弁護の余地が生まれる可能性がある。

裁判所判事は4日、トゥー・タオ、トーマス・レーン、J・アレクサンダー・ケーンの3容疑者について、保釈金を1人最大100万ドルに設定した。3人は、第2級殺人容疑で訴追されたデレク・ショービン容疑者と一緒にいた元警官。ショービン容疑者が5月25日、拘束したフロイドさんの首を9分近くにわたって膝で押さえつける様子は、目撃者が撮影していた。

この動画を機に、警察の暴行に対して世界中で抗議の声が上がった。ロイターが取材した法律専門家7人によると、この動画は法廷で弁護の材料になる可能性もある。

人がほう助や扇動で訴追されるのは通常、積極的に犯罪を促したり直接関与したりした場合で、逃亡車の運転などがこれに当たる。

法律事務所、ガーバリニ・アンド・シャーの弁護士、カート・ワインマン氏は「今回のケースでは、警官らは職責上、仲間の警官を補助・保護する必要があった。起訴するには、(ショービン容疑者が)行き過ぎた力をかけていたことを彼らが知っていた、あるいは知っていたはずだと証明する必要がある」と言う。

法廷資料によると、タオ容疑者はショービン容疑者がフロイドさんの首に膝を乗せるのを見た後、群衆が近寄り過ぎないよう制するために向きを変えた。

ワインマン氏は、タオ容疑者が日頃訓練されている通り、群衆の制御に集中していたように見えると指摘。また、ショービン容疑者の力の強さを監視し損なったとしてタオ容疑者を起訴するのは、ハードルが高いだろうと述べた。

「警官にそれ(チームの警官への監視)を期待するのは、あらゆる本能や日頃の訓練に背いた行動を取れと求めることになる」──。

タオ、レーン、ケーンの3容疑者それぞれの弁護士からはコメント要請への返信が得られていない。3容疑者はショービン容疑者とともにミネアポリス警察を解雇された。

ミネアポリス警察組合のボブ・クロール組合長は1日、組合メンバーへの書簡で、容疑者4人は「適切な手続きを経ずに解雇された」とし、復職を目指して組合の弁護士と協力していることを明らかにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中