最新記事

日本社会

アフターコロナの日本:観光需要回復は地元から、旅館は「3密回避」=星野リゾート代表

2020年5月3日(日)10時33分

新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受ける観光産業。星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表は、治療薬やワクチンが登場するまでの1―1年半の間は、緩やかな緩和期となり、旅行は「3密回避」の滞在が重視されるとみる。写真は「星のや東京」でインタビューに応じる同代表。4月23日撮影(2020年 ロイター/Akira Tomoshige)

新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受ける観光産業。星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路代表は、治療薬やワクチンが登場するまでの1―1年半の間は、緩やかな緩和期となり、旅行は「3密回避」の滞在が重視されるとみる。「3密回避」のため、サービスを見直しながら、地元の人に来てもらう「マイクロツーリズム」にも力を入れていく方針だ。緩和期は需要を拡大するより、下支えする政策が必要との見方を示した。

ロイターとのインタビューで語った。

「緩和期」の対応、サービスの設計見直し

星野代表は、1―1年半後に治療薬やワクチンができることを「ゴール」と位置付ける。ただ、緊急事態宣言が1―1年半続くわけではなく「緩やかな緩和期は必ず来る」とし、観光産業もその波に対応していくことが必要になるとみている。「そこまでは、旅行者が旅行先を選ぶ、旅行形態を選ぶ基準が変化する。私たちはサービスを設計し直さなければならないし、客は、旅の形態を非常に慎重に、コロナのことを意識しながら、選ぶ時期になる」と指摘する。

この緩やかな緩和期に大事なことは「観光が感染拡大に貢献しないこと」とし、ビュッフェを取り止めたり、チェックインをロビーではなく部屋で手早く行うなど「3密回避」のためにサービス内容を徹底的に見直していく。

同社が全国で運営している温泉旅館「界」。星野代表は「食事は個室で食べてもらっているし、部屋での滞在が多いので、3密回避には向いている観光の形態だと思っている」と話す。

回復はローカル、大都市、インバウンドの順

インバウンド需要比率が高く、4月8日から一時休業している「星のや東京」。治療薬やワクチンが開発されるまではインバウンドの戻りが見込めない中、「当面は、東京都内、特に23区内の方々に、30分で行ける高級温泉旅館ということで提案していきたい」という。

星野代表は、緊急事態宣言が解除になった後は、ローカル、大都市圏、インバウンドの順に客が戻ってくるとみている。「15─30分圏内の人に来ていただく観光は、需要が見込め、雇用を維持できるし、移動がないため感染拡大につながらない。(感染拡大の)第2波、第3波がきた時に、マイクロツーリズムをちゃんとやっておけば、売り上げの下支えになる」という。さらには、地元の人に教えられることもあり、情報交換をすることで、サービスの幅が広がるメリットがある。


【関連記事】
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・「緊急事態宣言」延長で未曽有の危機に 動き鈍い安倍政権の経済対策
・「新型コロナ感染長期化」という確実な将来 3つのデータが教える私たちのとるべき対策
・トランプ「新型コロナウイルス、武漢の研究所が発生源の可能性を確信」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HD、成長フェーズ入りに手応え 2030年目標

ワールド

中国のレアアース輸出、新規ライセンス第1弾発給=関

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ 経済

ビジネス

りそなHD、社内DXに100億円投資 「生成AIも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中