最新記事

新型コロナウイルス

コロナ危機に拡散する「独裁ウイルス」を許すな

VIRAL AUTHORITARIANISM

2020年4月22日(水)17時00分
パトリック・ガスパード(オープン・ソサエティー財団理事長)

第2に、スケープゴートをつくる動きに抵抗すべきだ。新型コロナウイルスを「中国ウイルス」呼ばわりする政府があまりに多いせいで、中国系市民を監視・差別する環境が生み出されてしまっている。ハイチ系アメリカ人の私は1980年代のHIV危機で、米疾病対策センター(CDC)がエイズは「同性愛者、ヘロイン使用者、血友病患者、ハイチ人」によって広がっていると発表し、迫害が起きるのを目の当たりにした。

最後に、根底にある経済的・社会的格差の問題に取り組まなければならない。こうした格差はパンデミックによって悪化しがちだ。アメリカではあまりに多くの家庭が医療アクセスや有給傷病休暇、労働者保護を得られないでいる。

悲しいことだが、私たちの権利の保護を責務と考えない権力者が多過ぎる。ならば、私たちが自ら権利を守らなければならない。

民主主義は単なる統治システムではない。この世界、そして世界における自身の位置を捉えるためのレンズだ。緊急事態のさなかにレンズを破壊したら、私たちは二度と同じ姿を目にできないかもしれない。

magcom200422_Gaspard.jpgパトリック・ガスパード
PATRICK GASPARD
アメリカの元外交官。民主党やオバマ政権で要職を歴任し、2013~16年には駐南アフリカ大使を務める。2018年に慈善団体オープン・ソサエティー財団の理事長に就任。

©Project Syndicate

<本誌2020年4月28日号掲載>

【参考記事】差別を生み出す恐怖との戦い方──トランプの「中国ウイルス」発言を読み解く
【参考記事】中国一党独裁の病巣が、感染拡大を助長する

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国は重要な隣国、関係深めたい=日中首脳会談で高市

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 期初予想には

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中