注目のキーワード

最新記事

日本に迫る医療崩壊

日本で医療崩壊は起きるのか? 欧米の事例とデータに基づき緊急提言

THE HEALTHCARE SYSTEM AT WAR

2020年4月21日(火)17時10分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

感染爆発が起きたイタリア北部ロンバルディア州ミラノの病院のICU FLAVIO LO SCALZO-REUTERS

<スペイン、イタリア、米ニューヨーク州では、死亡率が飛び抜けて高い。医療崩壊は何が原因なのか、そして日本でも起きるのか。感染症対策の第一人者が検証・提言する。本誌「日本に迫る医療崩壊」特集より>

4月15日、新型コロナウイルスによる世界の感染者数がついに200万人を突破した。10万人を超えたのが3月7日。それから1カ月もたたずに100万人、さらに半月足らずで200万人である。世界全体の死者数は4月10日に10万人を超え、いまだにうなぎ上りだ。魔の手はアジアから欧州、そしてアメリカに渡り、世界213カ国・地域に広がった。

20200428issue_cover200.jpgここで目立ってきたのが死亡率の違いである。

時に混同して使われるので整理すると、「死亡率(Mortality rate)」と「致死率(Case fatality rate)」は異なる。死亡率は一定人口に対する死亡者の割合で、致死率は感染者に対する死亡者の割合である。新型コロナでは無症状や無検査の感染者も多いため、その致死率は報告された感染者数のみで計算している。検査数を増やして感染者数が増えると致死率は下がる。

人口100万人当たりの死亡者数(チャート1)を見ると、スペイン、イタリアに比べてドイツ、韓国、中国、日本の低さがよく分かる。アメリカはそれほど高くないように見えるが、ニューヨーク州の値は821であり、飛び抜けて高い。

magSR_chart1.png

4月28日号「日本に迫る医療崩壊」特集20ページより

なぜ死亡率にこれほどの違いがあるのだろうか。さまざまな要因が挙げられるが、その1つとして注目されているのが「医療崩壊」だ。

まず、「医療崩壊」とは一体何だろうか。実は明確な定義がなく、言葉が独り歩きしているようにも思えるが、新型コロナに関して言えば「患者が急増して病院が機能不全を起こした状態」を指すことが多いようだ。英語で「医療崩壊」に当たる定型語はないが、米ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事は「overwhelm the capacity of the current health care system(現存するヘルスケアシステムの能力を凌駕する)」と表現している。

対策を考える場合には、その定義も明確にする必要があるので、私としては「医療崩壊」を「保健医療システムの機能不全」と言い換えて、感染拡大により「保健医療サービスの需要が急増し、供給できる能力を超えたために、本来提供できるサービスや成果を生むことができなくなること」と定義したい。

簡単に言うと、水をコップに注ぐ、その水が新型コロナの感染者で、コップが病院を含む保健医療サービスが供給できる能力・容量である。そのコップは病院だけではない。救急車もあれば、保健所もあり、開業医もいる。大量の水が注がれればコップから多くの水があふれ出す。この中には本来なら助かったかもしれない新型コロナ感染による死者、さらに、本来なら救急治療を受けられた脳梗塞の患者もいる。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ローマ教皇、近い将来の退任を否定

ビジネス

ロシア産石油の価格上限、報復なら原油380ドルも=

ワールド

岸田首相の石油価格上限「半分」発言、ロシア大統領府

ビジネス

独政府、エネ安保法改正でウニパー救済検討 株式取得

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:広がるインフレ 世界経済危機

2022年7月 5日号(6/28発売)

急激なインフレ、食糧・エネルギー不足、米バブル崩壊...... 「舵取り役」なき世界経済はどこへ

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    寝たふりする私の横で、私の英語を真似して笑うネイティブたち...その真意に後から気付いた

  • 2

    世界の英語はほとんど「母語なまり」...日本語英語を堂々と話すのが上達への近道だ

  • 3

    右足のない人骨は古代中国「五刑」の犠牲者だった......身の毛もよだつその内容

  • 4

    「タンパク質ダイエットには腸活が欠かせない」 順天…

  • 5

    【閲覧ご注意】動画:ヒトの皮膚に寄生するニキビダニ

  • 6

    【動画】ウィリアム王子、家族を「盗撮」したカメラ…

  • 7

    ロシア人バレリーナ、死体で発見。ウクライナ侵攻後…

  • 8

    留守のたび荒らされる寝室、隠し撮りに映ったのは「…

  • 9

    スリランカ、ガソリンほぼ尽きる 給油所に人の波...…

  • 10

    史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・…

  • 1

    寝たふりする私の横で、私の英語を真似して笑うネイティブたち...その真意に後から気付いた

  • 2

    【映像】飼い主のことが好きすぎる「寂しがり」な愛犬

  • 3

    【閲覧ご注意】動画:ヒトの皮膚に寄生するニキビダニ

  • 4

    【映像】頭部に銃創と見られる傷のあるホホジロザメ

  • 5

    史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・…

  • 6

    【映像】軍事侵攻後に死んだロシアのバレリーナたち

  • 7

    留守のたび荒らされる寝室、隠し撮りに映ったのは「…

  • 8

    世界の英語はほとんど「母語なまり」...日本語英語を…

  • 9

    【映像】韓国ユン大統領、NATOにまさかのNGカット掲…

  • 10

    【動画】ウィリアム王子、家族を「盗撮」したカメラ…

  • 1

    寝たふりする私の横で、私の英語を真似して笑うネイティブたち...その真意に後から気付いた

  • 2

    治験中のがん新療法、18人全員の腫瘍が6ヶ月で消失 専門医「前代未聞」

  • 3

    女性を踏み殺したゾウ、葬儀に現れ遺体を執拗に踏みつけ去る インド

  • 4

    【映像】突進してくるゾウの赤ちゃんが「ちっとも怖…

  • 5

    英ルイ王子の「やんちゃ」ぶりで、キャサリン妃に「…

  • 6

    インド人初のK-POPスター誕生へ 4000人から選ばれた…

  • 7

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 8

    中国側に「寝返った」ジャッキー・チェン、「父親が…

  • 9

    英ヘンリー王子夫妻、軽い扱いに「激怒」してイベン…

  • 10

    【映像】飼い主のことが好きすぎる「寂しがり」な愛犬

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月