最新記事

米中対立

空母のコロナ感染で苦境の米海軍、軍事演習で牽制する中国軍との緊張高まる

CHINA HOLDS NAVY DRILLS IN PACIFIC AS U.S. AIRCRAFT CARRIERS HIT BY CORONAVIRUS

2020年4月10日(金)15時30分
トム・オコナー

東シナ海で軍事演習に参加する中国海軍の紅稗型ミサイル艇(17年7月) CHINESE PEOPLE'S LIBERATION ARMY 

<米海軍の原子力空母4隻で乗組員がコロナに感染、そのさなかにも台湾などをめぐって米中両軍が互いを牽制>

中国海軍は最近、太平洋沿岸の防衛力強化を目的とする軍事演習を立て続けに実施し、米軍との緊張が高まっている。一方の米軍は、海軍空母4隻で乗組員が新型コロナウイルスに感染する事態となり、苦境に陥っている。

中国人民解放軍は先月後半、紅稗(ホウベイ)型ミサイル艇を投入した4日間の実弾演習を東シナ海で実施した。9日付の政府系タブロイド紙「環球時報」では、匿名の軍事専門家がこの軍事演習について海軍の沿岸防衛能力を強化する目的だと語った。演習では戦闘訓練のほか、機雷設置や救援作戦の訓練なども実施された。

紅稗(ホウベイ)型は、アメリカの軍事力の象徴的な存在でもある海軍空母など、大型の標的への攻撃に使用する小型で高速のミサイル艇として開発されている。米軍は、アジア太平洋地域で空母を筆頭とした高い海軍力を展開し、中国の軍事的な影響力の拡大に対抗しようとしている。

ところが今、少なくとも米海軍の原子力空母4隻で、乗組員が新型コロナウイルスに感染する事態が発生している。このうち現在グアムに停泊中の空母セオドア・ルーズベルトでは9日時点で乗組員416人の感染が確認された。1人は乗船中に意識不明となり、寄港後すぐに病院へ搬送された。

窮状訴えた空母艦長は解任

空母のブレット・クロージャー前艦長は、感染した乗組員の隔離が困難な窮状を訴える書簡を海軍上層部に送り、その書簡の内容がリークされてサンフランシスコ・クロニクル紙に掲載されたことから先週、解任された。そのクロージャー自身も、新型コロナの検査で陽性反応が出たと報じられた。

米海軍長官代行のトーマス・モドリーは、クロージャーの行動について、米軍に対する裏切りか、そうでなければ空母艦長としては「考えが甘く、愚か」だと叱責している。

この他、米海軍横須賀基地に寄港中の空母ロナルド・レーガン、ワシントン州の海軍基地を母校とする空母カール・ビンソン、空母ニミッツでも乗組員の感染が確認された。

米軍は、これまで中東やアフガニスタンなどの紛争地帯を重視してきたが、中国が軍事、経済、外交上の影響力を拡大していることから、次第に活動の中心をアジア太平洋地域に移している。

このため、米中両海軍の緊張は最近になって高まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界のM&A、4月は前年比11%増の2581億ドル

ワールド

マレーシア中銀、政策金利据え置き 成長見通しに下振

ビジネス

NTT、NTTデータを完全子会社化 2.3兆円でT

ワールド

豪ウッドサイド、年次総会で環境団体が抗議 株主の不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 8
    「関税帝」トランプが仕掛けた関税戦争の勝者は中国…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中