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感染症治療

「アビガン」は世界を救う新型コロナウイルス治療薬となれるか

2020年4月3日(金)16時30分
上 昌広(医療ガバナンス研究所理事長) *東洋経済オンラインからの転載

富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬「アビガン」は新型コロナウイルスにも有効なのか? ロイター/ISSEI KATO

新型コロナウイルス感染症がパンデミック(世界的流行)となった。世界中がパニックに陥っている。

3月17日に開催された自民党両院議員総会で、安倍晋三首相は「世界において恐怖が拡大している大きな原因は決定的なワクチンや治療薬がないこと」と語った。正鵠を射た発言だ。

新型コロナウイルス感染症の克服は治療薬とワクチンの開発にかかっていると言っていい。世界は激しい開発競争の真っ只中だ。

本稿では注目すべき2つの薬剤の開発動向を紹介したい。

まずは、抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療薬だ。HIV治療薬のような既存薬を新型コロナウイルスの治療に応用することを「ドラッグリポジショニング」という。他の疾患に対して臨床研究が終了し、既に承認されているため、安全性の評価が不要になる。パンデミック対策のように迅速な対応が求められるときに有用な医薬品開発の方法だ。

抗HIV薬が新型コロナウイルスに効く可能性

日本政府もこの方法を用いて、新型コロナウイルス治療薬の開発に着手している。2月13日に首相官邸の健康・医療戦略室などが提示した臨時研究開発予算の第1弾には「既存の抗HIV薬の治療効果及び安全性検討」として3億5000万円が国立国際医療研究センターに措置されている。

さらに3月10日には第2弾として「既存の抗HIV薬の治療効果及び安全性検討」という名目で3億5000万円が追加措置された。合計7億円だ。政府の力の入れようがご理解いただけるだろう。

なぜ、抗HIV薬が注目されるかと言えば、新型コロナウイルスが有する3CLproと呼ばれるタンパク分解酵素(プロテアーゼ)を阻害することがドッキング・シミュレーションというコンピューター・シミュレーションで示されているからだ。

新型コロナウイルスの治療薬の開発は、この酵素を効率よく阻害する薬剤の開発にかかっている。

抗HIV薬ロピナビルは、新型コロナウイルスに対して中程度の活性を有することがわかっている。同じくリトナビルという抗HIV薬を併用することで、消化管からの吸収を促進することもわかっており、「カレトラ」という名前でアッヴィから販売されている。1錠の薬価は322円だ。

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