最新記事

新型コロナ調査

NY州調査、人工呼吸器装着の重症患者「90%近くが死亡」

Nearly 90 Percent of COVID-19 Patients on Ventilators in New York Died

2020年4月24日(金)15時00分
スー・キム

65歳以上の患者では死亡率は97%超にものぼった(写真は集中治療室で人工呼吸器を調整する看護士) Benoit Tessier-REUTERS

<新型コロナウイルスに感染して入院した患者5700人を対象に行われた初の大規模調査の結果が明らかに>

米ニューヨーク州で実施された大規模な調査で、新型コロナウイルスに感染して人工呼吸器を使用した患者の死亡率が90%近くにのぼったことが分かった。同州最大の民間医療機関「ノースウェル・ヘルス」が系列病院に入院した患者を調査し、米医師会報(JAMA)で発表した。報告書によれば、人工呼吸器を使用した患者のうち、18~65歳の患者の死亡率は76.4%で、65歳以上の死亡率は97.2%だった。

調査はノースウェル・ヘルスとファインスタイン医学研究所が共同で実施。3月1日から4月4日の間に、ノースウェル・ヘルスの12の系列病院に入院した5700人の患者について調べた。

ファインスタイン医学研究所のカリーナ・W・デービッドソン副所長は、「ニューヨークは今や、新型コロナウイルスの感染拡大の中心地だ。臨床医、科学者、統計学者や研究者たちはみんな、ノースウェルの系列病院に入院している大勢の患者に最高の医療を提供するために、休むことなく働いている」と語った。「ノースウェルと共同で実施した調査を通じて、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者についての臨床的・科学的な知識を提供していきたい」

女性より男性の方が高い死亡率

報告書は今回の調査について、「米国内でCOVID-19で入院した患者についての、初の大規模な症例報告」だとしている。ノースウェル・ヘルスはニューヨーク市、ロングアイランドとウエストチェスター郡に系列病院を持ち、患者数は1100万人近くにのぼる。

「デービッドソン博士とノースウェルの調査チームは、ニューヨークでの感染拡大における最前線の対応を理解する上で不可欠な情報を提供してくれた」と、ファインスタイン医学研究所のケビン・J・トレイシー所長は語る。「これらの観察研究と、当研究所が提供するその他の臨床研究の結果は、今後の看護の改善に役立つだろう」

調査の対象となった患者の半数以上は男性で、全ての対象患者の平均年齢は63歳。死亡率は、女性よりも男性の方が高かった。

全体の3分の1(1734人)に発熱の症状があり、呼吸が荒くなった人は986人、酸素吸入を受けた人は1584人だった。入院から退院までの平均期間は4日前後だった。

調査期間中に退院または死亡した2634人の患者のうち、「14.2%が集中治療室(ICU)で治療を受け、12.2%が人工呼吸器を使用し、3.2%が透析や腎臓移植を受け、21%が死亡」した。人工呼吸器につながれた患者のうち88.1%がその後死亡している。

「人工呼吸器を使わなかった患者の死亡率は、18~65歳で19.8%、65歳以上で26.6%だった。18歳未満の患者の死亡例はなかった」と報告書は説明している。

<参考記事>新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実
<参考記事>新型コロナウイルス、男性の死亡リスクが高い理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中