最新記事

医療

新型コロナウイルス治療の人工呼吸器が世界的不足 軍も協力し増産態勢

2020年3月28日(土)10時16分

製造のボトルネック

イタリアの病院は、医療スタッフの人手不足だけでなく、人工呼吸器その他の設備の深刻な不足にも悩まされている。イタリア国防省の広報担当者によれば、シアレで陸軍の技術者が働き始めてから最初の製品は、28日から出荷が始まるはずだという。

またイタリア政府は、3月上旬に入札で発注した人工呼吸器その他の設備を4000―5000台近く購入した。ドイツでは、感染拡大が始まる前に各病院が約2万台の人工呼吸器を保有していたが、連邦政府はドレーゲルベルクに1万台を発注した。これは同社による通常の年間生産台数に匹敵する。ドイツの医療機器メーカーであるレーベンスタイン・メディカル・イノベーションのフランス支社長を務めるクリストフ・ヘンツェ氏がラジオ「フランス・インフォ」で語ったところでは、フランスにおける人工呼吸器への需要は、通常は年間約1000―1500台だが、現在では週に数百台まで増加している。

英国の保健相は、「英国は手に入る限り、できるだけ多くの人工呼吸器を必要としている」と語った。

だが、国境を閉鎖する国、あるいは医療用品の在庫を確保するための措置を取る国もあるなかで、人工呼吸器のパーツを確保することも難しくなる可能性がある。

ハミルトン・メディカルのウィーランドCEOによれば、同社はルーマニアで人工呼吸器用ホースを製造しているが、「重要な医療機器である可能性」を理由として、ここ数週間、ルーマニア当局によって出荷が止められていたという。ウィーランドCEOは、ルーマニアの税関当局に輸出を認めさせるためには、同国駐在のスイス領事館による介入が必要だったと話す。

「こうした製品が、それ自体としてはルーマニアにとって価値のないものであることを知ってもらうためには、政治的な働きかけに頼らざるをえなかった」とウィーランドCEOは言う。

スイス外務省の広報担当者は「在ブカレスト大使がルーマニア当局に連絡したことが功を奏して、事態を打開できた」と話す。ルーマニア当局者にもコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

中国の医療機器メーカー、北京誼安医療で調達担当ディレクターを務めるワン・スー氏によれば、同社は人工呼吸器の製造に欠かせないバルブやタービンといった主要コンポーネントを、スイスや米国、オランダといった国々からの輸入に頼っているという。だがグローバルに感染が拡大するなかで、世界各国にわたる供給元企業でも、必要なコンポーネントを作るための基本的な部品の一部が調達困難となる状況が生じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中