最新記事

感染症リスク

過度な運動はウイルス感染のリスクを高める

2020年3月24日(火)17時30分
松岡由希子

FOTOKITA -iStock

<世界各地で在宅勤務が奨励され運動不足になりがちだ。運動と感染症リスクとの関係をふまえ、効果的な運動のコツをまとめた......>

適度な運動は免疫能を高め、細菌やウイルスなどの感染予防に有効である一方、過度な運動はこれを低下させ、感染リスクを高める。

運動習慣と感染リスクとの関係は「Jカーブ」で表わされる。運動習慣のない人の感染リスクを平均とすると、適度な運動を習慣づけている人は感染リスクが平均以下に下がる一方、過度に運動するとかえって感染リスクは平均よりも高まる。

過度な運動は、呼吸器ウイルスに感染しやすい状態を引き起こす

米サウスカロライナ大学の研究チームが2008年11月に発表した研究結果では「サッカー選手やクロスカントリー競走の選手が、過酷な試合やトレーニングをすると、分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)が減少した」ことが示されている。

分泌型免疫グロブリンAは、免疫系で用いられ、ウイルスなどの病原体と結合して無力化するタンパク質だ。上気道感染症(URTI)と密接な関わりがあり、分泌型免疫グロブリンAのレベルが低下すると上気道感染症にかかりやすくなる。つまり、過度な運動は、呼吸器ウイルスに感染しやすい状態を引き起こすおそれがあるというわけだ。

香港大学の研究チームでは、1998年の香港でのインフルエンザによる死亡者2万4656人について、インフルエンザによる死亡リスクと運動習慣との関連を分析。運動をまったくしない人と、週5回以上、過度に運動する人は、適度に運動している人に比べて、死亡リスクが高くなることがわかった。

また、定期的な運動はインフルエンザ感染症の重症化リスクの軽減につながる。2009年に発表されたマウス実験によると、3ヶ月以上、定期的に運動していたマウスは、運動していないマウスに比べて、インフルエンザに感染しても、症状が軽く、ウイルス量、炎症性サイトカインやケモカインのレベルも低かった。

十分な食事と睡眠で免疫系を高め、前向きな思考を心がける

これらの研究成果をふまえ、米ウェイン州立大学のタマラ・ヒュー=バトラー准教授とマリアンヌ・ファルマン教授は、効果的な運動のコツとして、以下の点を指摘している。

・20分から45分間、軽度から中程度の運動を週3回程度行う
・自宅などでの隔離期間中は体力や健康の維持に努める(けしてこれらを高めようとはしないこと)
・運動中、他者との身体的な接触は避ける
・使用後は、運動器具を洗い、除菌する
・ジムを利用する際は、適度な換気をし、他の利用者から離れて飛沫感染を避ける
・十分な食事と睡眠をとって免疫系を高める
・前向きな思考を心がける

また、リスクの高い行動として、以下の点も指摘されている。

・極度に疲労した後の運動は避ける
・風邪のような症状があれば運動をやめる
・週5回以上の運動は避ける
・密集した閉鎖空間での運動は避ける
・ドリンクの回し飲みや食器の共有は避ける

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、ミュンヘン安保会議出席へ 米代表団50

ビジネス

アポロ、xAI関連の事業体に約34億ドル融資へ=報

ビジネス

米消費者の1年先インフレ期待低下、雇用見通し改善=

ワールド

トランプ政権、解雇された連邦職員の異議申し立て制限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中