最新記事

中国外交

中国、新型コロナウイルス感染鈍化でイメージ転換戦略 支援の外交攻勢

2020年3月11日(水)09時24分

中国は、国内の新型コロナウイルス感染者の増加が鈍化してきたとアピールし、感染者急増に直面する諸外国への支援を通じ、「責任ある大国」としての信頼獲得と、傷ついた対外イメージの回復を図ろうとしているようだ。写真は北京で、3日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国は、国内の新型コロナウイルス感染者の増加が鈍化してきたとアピールし、感染者急増に直面する諸外国への支援を通じ、「責任ある大国」としての信頼獲得と、傷ついた対外イメージの回復を図ろうとしているようだ。

中国の外交官たちは現在、各国に中国が感染拡大を抑え込んだとのメッセージを送り、中国人に対する入国制限を緩和するよう盛んに働き掛けている。同国外務省によると、既に400件以上のメディアの取材に応じ、300件を超える記事につなげたという。

医療機器の寄贈を含めた外交努力は、初期対応のまずさで新型ウイルス拡大を助長したと猛批判を浴びた中国の印象について、海外で好転させようとする取り組みの一環だ。

そうした効果のせいか、最近では世界中で新型ウイルス感染が広がっている一方で、中国政府は武漢市の封鎖といった劇的な措置で感染の抑制に成功した、との賞賛さえ獲得。

また、中国政府は、新型コロナウイルスの発生源を同国とする見方が広がっていることに対してさえ、異議を唱えつつある。外務省報道官は5日、ツイッターに「最初に確認されたからと言って、必ずしも発生源が中国とは限らない。われわれは引き続き発生源を追跡中だ」と投稿した。

ただ、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のアルフレッド・ウー准教授は「中国は新型ウイルス感染拡大で傷ついたイメージを注意深く作り替えようとしているが、中国政府の対応が後手に回って国際的な危機を招いたという事実がある以上、そんなことをやろうとしてもほとんど不可能だ」と一蹴した。

米コロンビア大学におけるAIDS研究で名高いデービッド・ホー氏は、新型ウイルスが中国で始まったのはほぼ確実で、重症急性呼吸器症候群(SARS)や今回の新型、そして他の動物で発見されたあらゆるコロナウイルスに関する知見を踏まえれば、中国が起源であることに疑いの余地は乏しい、と国際放送で有名な米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」の最近のインタビューで語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア失業率、第2四半期は33.2% 2四半期連続上

ビジネス

米中小企業景況感、7月は上昇 不透明感は強まる

ワールド

メキシコ、麻薬カルテル構成員をさらに米国へ移送 ト

ビジネス

日経平均が連日の史上最高値、CPI受け9月米利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 2
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...気になる1位は?
  • 3
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 4
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 9
    トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.…
  • 10
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中