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なぜフランスは「人質になったジャーナリスト」を英雄視し、日本は自己責任と切り捨てるのか

Passport Denial Is Social Death

2020年3月10日(火)16時20分
西村カリン(ジャーナリスト)

――あなたが帰国した時は?

私は、3人のフランス人ジャーナリストと共に拘束された。私たちの釈放を国が交渉したかは分からない。取引条件については何も知らない。帰国した際はフランス大統領に迎えられた。それは少し過剰な儀式だが、「帰国おめでとう」という意味だった。

フランスは、テロの被害者に対して最高のケアを払っている国の1つ。論理的には被害者は、フランス人だから敵に殺されたり、負傷したり、捕らえられる。国が救出活動をするのは当然だ。

テロの犠牲者は、戦争で負傷した兵士と同様の権利を享受する。彼らはフランスのために戦ったか、またはフランス人だったのでそうなった。両者とも、国民のサポートに値すると考えられている。

テロ被害者がテロに関連する治療を受ける場合、2年間は国が費用を全額負担する。寛大に思えるかもしれないが、実際は、それよりはるかに時間がかかることがある。

――日本社会はフリージャーナリストを無責任な記者と見なす傾向がある。

私は全てのケースを知っているわけではないが、正直に言えば、現場でリスクを取り過ぎているフリージャーナリストを見たことはある。しかし、誰が「責任あるジャーナリスト」と「無責任なジャーナリスト」を区別し判断するか。難しい問題だ。

戦争地帯で私が見たフランス人や外国人の同僚のほとんどは十分な知識を持ち、十分注意して取材していた。尊敬すべきプロだ。無責任とは言えない。

ただ、フランスでジャーナリストは比較的保護された地位にあるにもかかわらず、私は定期的に批判される。私はテロ防止とイスラム過激派との闘いについて力を入れているので、ジハード(聖戦)主義者とその支持者から攻撃されている。

また、私が拘束された経験を理解していない人種差別主義者にも攻撃されている。私は人質になったとき、アラブ人やイスラム教徒を憎まなかったからだ。

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