最新記事

スポーツ

東京五輪、延期決定の舞台裏 日本とIOCが読み誤った国際世論

2020年3月28日(土)10時05分

7月の東京五輪開催延期という日本とIOCの歴史的な決断から一夜明けた25日、東京駅に設置されたオリンピック時計は開催までの日数表示をやめた。3月25日、東京駅前で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

24日午後8時前、要人を乗せた黒塗りの車が次々と首相公邸に到着した。ドアが開いて出てきたのは、東京都の小池百合子都知事と東京五輪大会組織委員会(組織委)の森喜朗会長。間もなく行われる安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長のトップ電話会談に同席するためだ。

オリンピックの開催を延期するという過去にない決断が下る瞬間が近づいていた。

しかし、実は安倍首相とバッハ会長が東京大会の延期を申し合わせる前に、日本側とIOCは水面下の協議を進めていた。安倍・バッハ会談の約1時間前、組織委の武藤敏郎事務総長がジョン・コーツIOC調整委員長に電話で首相の意向を伝達。両氏による地ならしの話し合いで、東京での開催を約1年延期するとの立場を互いに確認した。

ある組織委員会の関係者は「開催を1年延期したいという安倍首相の希望は、武藤事務総長からコーツ氏に伝えられ、両者の考えをすり合わせることができた」と話した。

治安の良さと経済力を誇る日本で滞りなく開かれると思われていた東京五輪は、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、開催4カ月前の延期という想定外の変転を余儀なくされた。

ロイターは関係者10人以上に取材し、延期が決まるまでの混乱の舞台裏に迫った。そこで明らかになったのは、ウイルス被害の深刻化とともに変化する国際世論を読み誤り、右往左往する日本とIOCの姿だった。

予定通りの7月開催に向けて結束を強めようとする日本の五輪関係者、選手の安全を心配する各競技団体、最新情報を求めるスポンサー企業──。延期決定までの数日間、日本側やIOCには7月開催の是非を巡って内外からさまざまな声が強まっていた。

7月開催の希望を最終的に打ち砕いたのは、複数の関係者によると、世界的なアスリートたちや都市封鎖(ロックダウン)に踏み切った国々によるウイルス禍の脅威と安全軽視への警告のうねりだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エプスタイン文書、米司法省が30日以内に公開へ

ワールド

ロシア、米国との接触継続 ウクライナ巡る新たな進展

ビジネス

FRB、明確な反対意見ある中で利下げ決定=10月F

ビジネス

米労働省、10月雇用統計発表取りやめ 11月分は1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中