最新記事

テクノロジー

3Dプリンターとシュノーケリングマスクで人工呼吸器の試作に成功、伊ベンチャー

3D-Printed Valve Turns Snorkeling Mask Into Working Hospital Ventilator

2020年3月26日(木)14時35分
ジェイソン・マードック

市販のシュノーケリングマスクが3Dプリンターで人工呼吸器に変身 Isinnova

<医療崩壊に苦しむイタリアで速攻開発、特許は公開して新型肺炎で苦しむ患者に届けたい>

新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大しているイタリアで、あるテック系スタートアップ企業が3Dプリント技術を使ってシュノーケル用のフェイスマスクを人工呼吸器に使う技術を開発。画期的なアイデアに称賛の声が上がっている。

クリスチャン・フラカッシが創業した3Dプリンター事業のスタートアップ企業イシンノーバ(Isinnova)は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の治療に使う人工呼吸器が不足していることに着目。自社の3Dプリント技術を使い、シュノーケリングマスクと人工呼吸器をつなぐ医療用バルブの試作に成功した。

イシンノーバはこのバルブの特許権を取得したが、誰でも複製できるよう設計図を公開している。開発チームのブログによれば、実用実験はこれまでのところ上々だ。

イタリアは中国を除けば新型コロナウイルスの感染者が最も多く、これまでに6万9000人以上の感染が確認されている。全土で市民の外出や移動を制限する封鎖措置(ロックダウン)が取られているが、人工呼吸器などの医療機器の不足が深刻だ。

ロンバルディアの医師のアイデア

3Dプリンターを使うという最初のアイデアは、医療崩壊が深刻な北部ロンバルディア州にあるガルドーネ・バル・トロンピア病院の元医長レナート・ファベロがイシンノーバ社に持ち込んだ。

このアプローチが斬新なのは、市販のシュノーケルを人工呼吸器に適合させた点。今回イシンノーバが使用したのは仏デカトロン社製のシュノーケリング用マスク「イージーブレスEasybreath」だ。

「デカトロンは協力に前向きで、すぐに私たちが指定したマスクの設計図を提供してくれた。私たちはマスクを分解して研究し、人工呼吸器につなぐためのバルブを設計した。これをシャーロット・バルブと名づけ、すぐに3Dプリンターで複製した」とイシンノーバの開発チームは説明する。

同社はこのバルブについて、まだ「未承認の装置」だが、地元のキアーリ病院での実用実験で効果が認められたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中