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米銀、州の権限弱める全国統一基準働きかけ=情報筋

2025年08月25日(月)13時22分

米銀行業界は銀行サービス提供の規制監督について、州が定める規則より優先される全米統一基準を制定するよう米通貨監督庁(OCC)に働きかけている。資料写真、米NYで4月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

Nupur Anand

[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米銀行業界は銀行サービス提供の規制監督について、州が定める規則より優先される全米統一基準を制定するよう米通貨監督庁(OCC)に働きかけている。情報筋3人が明らかにした。

特に大手銀行は、融資、債券発行、投資銀行サービスの提供、マネーロンダリング(資金洗浄)リスクの評価方法についての統一基準を求めるとともに、州の権限を抑制するよう訴えているという。

こうした動きは、トランプ米政権が進める銀行規制緩和を固定化しようとする業界の広範な取り組みの一環だ。

情報筋によると、要望が認められれば銀行は業務運営が容易になる。また、銀行が政治的または宗教的信条を理由に顧客へのサービスを拒否する「デバンキング」を巡り、州が銀行の運営に口出しする権限も抑制される。

<州は二重構造が必要と主張>

各州はこれまで、銃、気候変動、多様性、その他の社会問題に関する銀行のポリシーを理由に銀行を処罰し、業務停止を命じてきた。

州銀行監督評議会(CSBS)は、安全性と健全性、消費者保護、競争市場を確保するためには連邦レベルと州レベルの二重構造が何より重要であり、連邦レベルだけの構造ではそれらの実現が困難になると主張。州による銀行監督は、地域社会に適合した規則を策定し、消費者を保護するために必要だとしている。

これに対し、米銀行協会(ABA)は以前、既存の連邦法を無視する法律を検討する州が増えていると指摘。預金受け入れ、融資、リスク管理など全国銀行の基本業務に関する権限を州規制当局に付与する動きに反対していた。

<最高裁の「プリエンプション」>

全国統一基準を巡る議論は、米銀行大手バンク・オブ・アメリカ関連の訴訟を発端に注目を浴びるようになった。米最高裁判所は2024年の判決で、全国規模の銀行については連邦法が州法よりも優先される「プリエンプション」の判断を下した。

大手銀行は今年に入ってから、規則の不透明さを指摘してデバンキング批判をかわすためのロビー活動に力を入れている。トランプ大統領は今月、デバンキングに関し、規則統一を目的とした大統領令を出した。

金融機関はこれまでにストレステスト(健全性審査)や資本要件の緩和を達成しており、現在は大統領令に意を強くしてプリエンプションに焦点を当てていると情報筋の1人は話した。

情報筋3人によると、銀行は今年に入ってこの問題についてOCCと会談。今後はロビー活動を強化する計画だ。

OCCはコメントを差し控えるとした。

業界団体の米銀行ポリシー研究所は、プリエンプションを「強く支持する」との声明を出した。

ABAは、規制当局に対し、全国銀行についてプリエンプション原則を積極的に守るよう求めた。ABAはコメント要請に応じなかった。

JPモルガン・チェースの広報担当者は「当社は銀行業務における政治的または宗教的な差別を明確に禁止する全国基準を支持する」とコメントした。

ロイター
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