最新記事

感染症

中国、感染しても無症状者は統計に反映せず 新型コロナウイルス感染爆発「第2波」の懸念

2020年3月28日(土)09時32分

中国では18─22日までの新規感染者はゼロとなっている。だが、武漢市で20日に1人の感染が確認されていた。この62歳の男性は症状がなかったとの理由で、統計には含まれなかった。

また、独立系メディアの財新は、複数の病院関係者の話として、24日には無症候性キャリアーから1人の医師が感染したと報じている。

中国当局は、無症候性キャリアーがその後に発病すれば、感染者数に追加すると説明する。それでも診断を受けず、それゆえに隔離されていない無症候性キャリアーが、どれだけいるかの謎は残ったままだ。

専門家からは、封鎖解除に伴って、未知の無症候性キャリアーが新たな感染経路になる恐れがあると警告する声が聞かれる。

豪シドニー大学の公衆衛生専門家、アダム・カムラト・スコット氏は、多くの国がまだ地域社会全体を検査できる態勢が整っていない点を踏まえると、特に心配だと話した。

無症候性キャリアーの感染力が、どの程度かも分かっていない。最近のある分析結果に基づくと、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは、感染者104人のうち33人は、日本の自衛隊の病院での平均10日間の経過観察後も症状が出なかった。

23日に発表された別の調査によると、中国重慶市では感染者の18%が無症状だった。さらに新型コロナは症状が最も軽度な時に、より人に感染させやすいとの報告さえある。

米イェール大学公衆衛生大学院は、無症候性キャリアーの存在は、空港などのスクリーニングでは中国から他国へのウイルス移動を十分に阻止できないことを意味するとの見解を示した。

豪クイーンズランド大学・分子生命科学研究所のイアン・ヘンダーソン所長は「新型コロナに感染しているかどうかの血清診断方法が確立されてからでないと、本当の状況は明らかにならないだろう」と言い切った。

David Stanway

[上海 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルスがあぶり出す日本の危機 自粛ムードまとう「同調圧力」の危険性
・新型コロナと戦う米政治家が大統領候補として急浮上、サンダース抜く
・「中国ウイルス」作戦を思いついたトランプ大統領は天才?! by パックン


20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中