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2020米大統領選

米民主党候補者選び、ヤマ場のスーパーチューズデー迫る 新投票制度のカリフォルニアは混乱必至

2020年2月29日(土)15時00分

ビバリーヒルズ市は今年1月、1度に4人しか候補者名を表示できないタッチスクリーンシステムの修正を求める裁判を起こした。有権者が他の候補者名を見るには煩雑な手順を踏まなければならず、有権者が全候補者を見ようとしないリスクが生じるという理由だ。

市の司法長官によると、判決が下されるのは3月3日よりも後になる見通し。ロサンゼルス郡の広報責任者は裁判についてコメントを拒否した一方、自分たちが昨年9月に模擬選挙を実行して新しい機械を試し、候補者リストを見るためのボタンを利用者からの意見を踏まえて手直しするなど、改良を加えたと説明した。

オレンジ郡も、別メーカーではあるがやはり新しい投票機械を導入している。責任者のケリー氏は、全候補者名を認識するための操作は分かりやすいと強調した。

ややこしいことに、ロサンゼルス郡とオレンジ郡の新しい投票機械自体では、票の集計ができない。有権者が特定の候補を選ぶと、選択結果を記した紙が印刷され、問題がなければ機械内の箱にその紙を投じる。担当者たちがその用紙を回収し、セキュリティーが確保された場所に移動した上で、中央集票システムを通じてカウントされる仕組みだ。また有権者は投票機械を使わず、最初から投票用紙に候補者を記入することもできる。

こうした新技術だけでなく、従来の投票所にとって代わる形で、もっと大規模でスタッフ人員が充実しているとされる「投票センター」が設置される。こうしたセンターの一部では期日前投票も実施されるようになった。センターは、投票する日に同じ場所で有権者登録をすることも可能にした。有権者は自宅近くで、そこだけと決められた投票所に行くのではなく、郡内であればどこの投票センターも利用できるようになる。

また選管担当者たちは、新制度に参加している郡の全登録有権者に投票用紙を送り、郵便投票の積極活用も呼び掛けている。

投票場所は激減

その代わり、投票場所は著しく減少する。例えばロサンゼルス郡では、予備選で約970カ所の投票センターが設置されるが、16年の予備選で稼働した投票所は4500カ所と、この4倍以上だった。選管担当者たちの見込みでは、郵便投票の利用や期日前に投票センターに行く人が増えるので、選挙当日の投票場所は少なくて済むことになるというのだ。

ロサンゼルス郡の選管の広報担当者は、各世帯へのダイレクトメールやメディアを通じたお知らせなどで有権者に対する活発な啓蒙活動をしていると主張した。

それでもある市民団体の幹部は、広く告知するのは難しいと指摘。有権者数が膨大で選挙期日が迫っている中で、昔の投票所に行ってしまったり、投票システムが変わったと知らないままになったりするケースが出てくる恐れがあると述べ、制度変更をまだ聞いたことがないという有権者を個人的に数多く知っているとも警告した。

ロサンゼルス郡ラハブラハイツに住むコンサルタントのリー・ジャクソンさん(45)も困惑する1人だ。民主党の予備選に足を運ぶつもりだとしながらも、制度変更に関しては「漠然と」耳にしただけで、最も近い投票センターの場所もはっきりしないと嘆く。

また自身は「無党派」として登録されている。カリフォルニア州の民主党は州有権者の約25%を占める無党派層にも予備選参加を認めるが、参加する無党派の人々には大統領選本選でも民主党候補に投票することが義務づけられる。「もう、どうして良いか全く分からない」という。同州では有権者の約4人に1人が無党派とされている。

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