最新記事

中国経済

中国、企業活動が徐々に再開 製造業集積地で出稼ぎ労働者の流入が大幅加速

2020年2月26日(水)19時10分

中国で多くの地域が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限を緩和する中、東部や南部の製造業の集積地では、地方からの出稼ぎ労働者が戻り始め、ラッシュアワーの道路の交通量が増えている。写真は18日 深センで撮影(2020年 ロイター/David Kirton)

中国で多くの地域が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限を緩和する中、東部や南部の製造業の集積地では、地方からの出稼ぎ労働者が戻り始め、ラッシュアワーの道路の交通量が増えている。

中国国家衛生健康委員会の発表によると、中国本土の新型ウイルスの新たな感染者は25日は406人。感染の中心地である湖北省の25日の新たな感染者は401人だったため、湖北省を除く本土での新規感染者は5人ということになる。

中国の一部の地域は、新型ウイルスのリスクが後退したとして警戒レベルを引き下げ、移動制限を緩和したり、企業の生産再開を支援したりしている。

ロイターが交通運輸省のデータを基に算出したところによると、新型ウイルスの影響で延長されていた春節(旧正月)の連休が上海市などで終わった2月10日以降、およそ1億8000万人の労働者が都市部などで仕事に戻るため、郷里を離れた。

現在では1日当たり1400万人以上のペースで戻っていることを踏まえると、2月の最後の2週間には1億9200万人程度が仕事に復帰していることになり、政府が想定する1億2000万人を上回る。

ネット検索大手のバイドゥがまとめたデータによると、南部の経済・輸出の中心地である広東省と、繊維や機械の生産が盛んな東部の浙江省では先週以降、出稼ぎ労働者の流入が大幅に加速している。

広東省政府は、出稼ぎ労働者の復帰を支援するため、貸し切り列車を手配。省政府の高官は記者会見で「広東省は、情報技術(IT)や自動車、石油化学、家電の企業、特にファーウェイ、ZTE、美的、GACグループの生産再開を最優先事項に位置付けている」と説明した。

ファーウェイの本社があり、中国のシリコンバレーと称される深センでは、労働者流入が春節休暇後で最高に達したが、昨年のピーク時は大幅に下回っている。

深センの交通量も今週、急増した。深センの交通当局のデータによると、24日朝のラッシュアワーの車の交通量は42万0900台で、17日の同時間帯と比べて58%増加した。ただ、中国当局は依然として、新型ウイルスの感染リスクを抑制するため企業にテレワークの継続を促しているため、月曜日の交通量としては、新型ウイルスの感染が起こる前の水準をなお40%下回っている。

企業活動の再開は徐々に進んでいるが、サプライチェーンの混乱や需要減退、人手不足を背景に、生産水準は通常よりも大幅に低い状態だ。米アップルの主要な製造委託先のフォックスコンはまだ、生産を完全には再開できていない。アップルは最近、新型ウイルスの感染拡大が中国での同社製品の生産と需要の両方に影響を与えているため、1-3月期の売上高が会社予想に届かない見通しだと発表した。

[北京/上海 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・中国頼みの世界の製造業、新型ウイルスで物流ストップしお手上げ状態
・アメリカから帰国した私が日本の大手航空会社の新型肺炎対策に絶句した訳
・感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「インフル猛威」のなぜ


20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、5月はプラス転換 予想も上回

ビジネス

ホンダ社長、日産との統合協議再開「当分もうない」

ビジネス

世界経済の不確実性、貿易戦争終結でも続く=アイルラ

ワールド

パキスタン、インドの攻撃で約50人死亡と発表 40
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中