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見過ごされがちだった、父子家庭が抱える生活・育児の困難

2020年2月5日(水)13時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

これは10代全体のデータだが、上<表1>の分母・分子(a、b)は1歳刻みで得ることもできる。年齢別に3つの群の非行少年出現率を出し、折れ線グラフにすると<図1>のようになる。

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最近の非行率の年齢カーブを見ると、10代半ばに山がある。戦後初期の頃は18~19歳の年長少年で高かったが、時代と共に非行は低年齢化している。

15歳といえば人生初の進路分化が起きる時期で、高校入試の重圧(選り分け)が影を落としているのかもしれない。発達面で見ても、心が大きく揺れ動く時期だ。この2つの要因の影響は大きい。

3本の曲線を見ると、どの年齢でも一定の開きをもって「全体<母子<父子」となっている。ひとり親世帯とくくられることが多いが、母子世帯と父子世帯ではかなりの差が出ている。

どういう事情かにもよるが、離婚で生活が荒れる度合いは母親よりも父親の方が大きいだろう。父親の場合、仕事中心になりがちで子どもとの接触時間も多く取れない。家事や育児を妻に任せきりで、いざひとりになると子どものケアもままならない――こうした父子世帯の実態が家庭の情緒安定機能を低減させ、子どもの育ちに影響するのかもしれない。

ひとり親家庭というと反射的に母子世帯が想起され、シングルファザーの困難は陰に隠れがちだ。母子世帯と父子世帯が受けられる公的支援の差はなくなってきているが、後者の場合、経済的困窮に加えて、生活や育児の内実に関わる困難が起きやすい。シングルファザー問題の啓発の必要性も言われてはいるが、企業社会の認識も変えなければならない。「育児は母親がするもの」という思い込みが強い職場では、シングルファザーのワーク・ライフ・バランスははばまれる。

昨年の民法改正により、特別養子縁組の成立要件が緩和された。児童養護施設などで暮らす子どもに家庭的な養育環境を提供するためだ。今後は「未婚の父」も増えていくだろう。今までの「当たり前」を変えなければならない時だ。

<資料:警察庁『犯罪統計書』(2015年)
    総務省『国勢調査』(2015年)

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