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習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」

2020年2月4日(火)11時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

事態の展開に慌てた湖北省赤十字会(紅十字会)は1月30日、新型肺炎発症後第1回の支援物資や支援金に関する使用状況を発表した。

それによれば、なんと、指定病院の協和医院は新型肺炎発症以来、3000個のマスクの配給と1万2千元(1元 = 15.46円)の献金しか受けておらず、武漢市の仁愛医院と天佑医院にのみ、それぞれN95型マスク1.6万個と36万元を寄付したとのこと(後に1.6万個ではなく1.8万個であったと訂正。したがって合計3万6千個のマスク)。仁愛医院の従業員は協和医院の従業員の10分の1にも満たず、また美容整形とか婦人科、不妊治療あるいは性病関係などを扱うことで名が知れた病院であって、新型肺炎治療とは何の関係もない民間病院でしかない。

しかも協和医院に送られたマスクと献金は、武漢赤十字会からではなく、陝西省の韓という女性からの寄付であった。

1月31日になると武漢赤十字会が新型肺炎発症以来、第1回の援助物資に関する明細を発表した。武漢市には合計61の病院が指定医院になっているのだが、1月30日までに支援物資を配布した病院数は13であるとのこと。

中国政府の通信社である新華社通信によれば、30日までに武漢赤十字会はすでに「6.0808億元、9,316箱のマスク、74,522着の防護服、80,456個の医療用ゴーグルおよびその他の薬品や医療器械」などを受け取っているという。

その金と物資はどこに行ったのか?

協和医院の関係者によれば、武漢赤十字会の援助物資や献金などの配布先一覧表の中に、そもそも協和医院の名前がないという。

以上の情報の主たる内容は比較的リベラルな(習近平政権以前は非常にリベラルだった)「南方人物週刊」に書いてある。

また2月1日16:18には、協和医院の看護師が鳳凰網新聞センターの「正面FACE」に語った音声がウェイボー(微博、weibo)で発信された。鳳凰網による看護師への取材動画はこちらでも観ることができる。削除される可能性があるので、念のため複数ご紹介しておく。

看護師が何を訴えたのかに関して、以下に概略を記す。

●協和病院には医療用防護服が、もう1着もないのです。

●ニュースを見て、数万のN95マスクが武漢紅十字会(赤十字会)に届いていることを知りましたが、私たちのところ(協和病院)に届いたのは3000枚の普通のマスクでした。協和病院には8000人の職員がいるのに、3,000個のマスクで足りるはずがありません。

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