最新記事

北朝鮮

金正恩が語った「新戦略兵器」とは? 速度向上したミサイルあるいは多弾頭か

2020年1月9日(木)09時28分

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は昨年12月末に開いた党中央委員会総会の演説で、世界は遠からず同国の「新型戦略兵器」を目にすると語り、核開発や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験について一方的に公約に縛られる理由はもはやなくなったと宣言した。写真は超大型多連装ロケットの試験を視察する金氏。11月28日、朝鮮中央通信(KCNA)が公開。撮影日は不明。(2020年 KCNA)

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は昨年12月末に開いた党中央委員会総会の演説で、世界は遠からず同国の「新型戦略兵器」を目にすると語り、核開発や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験について一方的に公約に縛られる理由はもはやなくなったと宣言した。

この発言は、北朝鮮が米国との首脳外交に配慮して2年余り見送ってきた大規模な核関連実験を再開する姿勢を最大限に強調したものだ。そして今年中に長距離ミサイル発射などの実験を再び行えば、北朝鮮にとっては核開発の面で意義ある技術的な進歩と貴重な経験値が得られる可能性がある。

ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)のジェフリー・ルイス研究員は、北朝鮮の核兵器は何年にもわたる開発作業の結果、次にどんな実験があるか予測が難しいほどの発展を成し遂げていると指摘した。

複数の米軍事当局者の話では、北朝鮮は長距離ミサイルの発射実験に動くというのが最もあり得るシナリオの1つだ。別の専門家は、衛星打ち上げや新型弾道ミサイル搭載潜水艦就役、最大級のミサイル向けの国産の新型移動発射台(TEL)配備なども考えられるとみている。

CNSのグレース・リュー研究員は「北朝鮮はいかなる実験を通じても、より速度があり射程距離が長く、信頼性も向上する兵器を開発できるだけでなく、こうした実験に携わる人々の経験が高まり、兵器の使用や配備に関する実践的なノウハウを身につけられる」と解説した。

推進装置の改善

北朝鮮は昨年12月上旬、西海衛星発射場で2つの重要な実験を行った。米国の核がもたらす脅威に対抗する「新たな戦略兵器」の開発が目的とされている。

国営メディアは実験の詳しい内容や戦略兵器の正体を明らかにしなかったが、米国と韓国の政府高官は、北朝鮮が恐らくはICBM用のロケットエンジンをテストしたのではないかとの見方を示した。

米国科学者連盟(FAS)のアンキット・パンダ上席研究員は、北朝鮮はより優れた液体燃料の開発か、過去にトラブルが起きたエンジンの改修に向け作業を行うかもしれないと述べた。別の専門家によると、液体燃料に比べて保存や輸送が簡単な固体燃料ロケットモーター(SRM)の進化版の開発を進めていてもおかしくないという。

SRMは、北朝鮮が取り組んでいる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実践配備の上でも重要な意味を持つ。

パンダ氏は、ICBM規模までSRMを進化させることについてはさまざまな課題があるとはいえ、北朝鮮はこの分野でも技術的な困難を突破したと証明するとみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スタバ、競争激化の中国で平均5元値下げへ 一部対象

ビジネス

街角景気5月は1.8ポイント上昇、5カ月ぶりプラス

ワールド

中南米諸国、堅実な財政政策で経済強化を=IMF副専

ビジネス

金利上昇継続すれば、利払い費増加し政策的経費圧迫す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、健康に問題ないのか?
  • 3
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全な場所」に涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 6
    コメ価格高騰で放映される連続ドラマ『進次郎の備蓄…
  • 7
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    ディズニーの大幅な人員削減に広がる「歓喜の声」...…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 6
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中