最新記事

アメリカ社会

密かに人気集めるサバイバルキャンプ トランプが分断した米国で深まる社会不安

2019年12月30日(月)17時00分

サザンイリノイ大のチャッド・ハデルストン人類学教授は、こうした不安感は「終末論的な絵空事」だと話す。「世界中の研究は、まず何よりも先にこうした共同体が出現することを示している」とし、ハリケーン「カトリーナ」のような大災害後についての研究などを根拠に挙げた。

ミラー氏によると、フォーティテュード牧場の会員はあらゆる人種・民族系がいて総勢175人前後。ビジネスや軍の経歴を持つ人が多く、大半が政府を信用していないという。

ミラー氏は牧場の正確な位置を明かさないよう求めた。今はコロラド州に2カ所とウエストバージニア州に1カ所があるが、投資家を見つけられたら、さらに10州ぐらいまで増やせたらいいと考えている。

特殊集団

コロラド州キャッスルロックの会員のキキ・バンディラさん(53)は医療保険の仕事をしている。現代の技術への過度の依存を懸念しており、フォーティテュード牧場は生き残るための保険と考えている。「われわれは皆、一定程度の備えが必要だ。こうした動きは少しずつ主流になっていると思う。右派にしろ左派にしろ、米政府で起きているのは混沌状態だと思うからだ」と話した。

名をトムとだけ明かした、メリーランド州で住宅業を営む52歳の男性は、2021年に経済が破滅的な状態に陥るのを恐れ、交際相手と子供たちを連れて行く場所が欲しいと考えている。「そんなときに諦めようとする連中は多いだろうが、そんな連中のほとんどは、あの牧場にいようとはしないだろう」

米国民のどのぐらいが、こうした人々なのかを把握するのは難しい。多くは表だって活動していないからだ。しかしレディー・トゥー・ゴー・サバイバル社のロマン・ザラシェフスキ最高経営責任者(CEO)といった業界関係者は、活動に対する関心は高まっていると話す。

ザラシュエフスキ氏によると、同社が手掛けるサバイバルキット入りバッグやガスマスクの販売は「リベラルなプレッパー」からの引き合いで2─3倍に増えている。「こうした(リベラル系の)人々はトランプ氏がやっていることを懸念している」と説明し、全面的な内戦の勃発はあり得ないことではない」とまで語った。

プレッパー活動を行っている人々には、民間の運営するサバイバル目的のコミュニティーは万人向けではないかもしれないとの声もある。

緊急事態に備えてファミリーを訓練したり装備を販売したりするロッキー・マウンテン・リーディネスの経営者ドン・ロジャーズ氏は「互いにまったく見知らぬ100人ぐらいの人を1カ所の施設にぶち込むのは課題が大きいだろう」と述べ、「人々を統率する特殊な集団と特殊な指導者が必要になる」との見方を示した。

フォーティテュード牧場のミラー氏は、この牧場がまさにそうした集団になると信じている。「ここに来なければならなくなったということは、外では本当にひどいことが起きているということだ。そんなときに一体どこに行くつもりかね」と話した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 10
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中