最新記事

気候変動

温暖化でヒグマが冬眠できない!──ウクライナ

Bears in Ukraine Aren't Hibernating Because It's Too Warm

2019年12月26日(木)14時45分
ロージー・マコール

暖冬で眠れないヒグマが増えている Christian Charisius-REUTERS

<12月になっても冬らしい気温がまだ1週間しかないウクライナ南部では、保護している約30頭のヒグマのうちまだ3頭しか冬眠に入れない異常事態が続いている>

異常な暖冬で、ウクライナのヒグマが冬眠できずにいると、自然保護活動家が訴えている。ウクライナ南部の国立自然保護区の保護センターによれば、冬はすべてのヒグマが冬ごもりしていなければならないが、センターでリハビリ中のヒグマで冬眠したのはまだ3頭しかいない。

他の29~32頭は冬眠に入れない「クマの不眠症」を患っているという。保護センターで長年暮らしてきたヒグマのなかには冬眠の本能が衰えている個体もいるのは事実だが、去年はほとんどが冬眠した。冬にしては気温が高過ぎるのが原因だ、と関係者は言う。

同保護区周辺の気温は4℃前後で、12月の平均気温であるマイナス2.3℃を上回り、4月の平均気温6.9℃に近い。4月といえば、クマたちが冬ごもりから出てくる時期だ。

保護センターによれば、今年はまだ冬らしい冬が一週間しかない。その間に3頭は冬眠状態に入ったが、他のヒグマたちは霜が降りる天候を待っている、という。

<参考記事>地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し脳を食べる行動も
<参考記事>地球温暖化が生む危険な「雑種フグ」急増 問われる食の安全管理

気温が1度上がると冬眠が6日減る

米国立公園局によれば、クマの冬眠の長さは種や地域によって違う。メキシコのアメリカグマなら数日~数週間、アラスカのヒグマなら6カ月、という具合だ。冬ごもりで代謝を下げることによってクマは食料不足の冬と寒さを乗り切る。

気候変動はこのリズムに影響を与えているようで、たとえばアメリカグマの冬眠期間は徐々に短くなっている。

2頭のコグマを連れて冬ごもりに入るアメリカグマ


気温が1度上がるごとに、アメリカグマの冬眠は6日減る。ということは「2050年までにはこのクマの冬眠期間は15~39日短くなるかもしれない」と、イギリスの生態学者は2017年に指摘している。

2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアのLNG輸出、今後4年の停滞想定 経済省の悲

ワールド

ブラジル資源大手バーレ、第1四半期純利益9%減 予

ビジネス

韓国LGエナジー、第1四半期は前年比75%営業減益

ワールド

米、ウクライナに長距離ミサイル供与 既に実戦使用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中