最新記事

米朝関係

行き詰まりを見せる米朝非核化交渉、その背景は?

2019年12月10日(火)15時00分

北朝鮮の非核化交渉は、10月にストックホルムで米朝実務者協議が物別れに終わって以来、全く進展が見えない。写真は6月、南北軍事境界線上の板門店に並んで立つトランプ米大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長(右)(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

北朝鮮の非核化交渉は、10月にストックホルムで米朝実務者協議が物別れに終わって以来、全く進展が見えない。

金正恩朝鮮労働党委員長は、米国が交渉姿勢を改める「期限」を年末に設定している。米政府はこうした期限を作為的だとして重要視していない。

一方で北朝鮮の金星国連大使は「非核化は既に交渉のテーブルから外れている」と発言した。以下で両国の言い分が対立し、交渉の行き詰まりにつながっている事情を説明する。

敵視政策

ストックホルムの実務者協議が不調に終わった際に、北朝鮮の代表は米政府が「古い考えと態度」にこだわっていると非難した。実際に双方が具体的に提示した条件などはほとんど分かっていないが、北朝鮮側はずっと核実験施設の廃棄するのと引き替えに、制裁の解除を含めた相応の「見返り」を米国に求めてきた。

2月にトランプ大統領と金正恩氏がベトナムで行った首脳会談では、北朝鮮は寧辺の核施設を廃棄する代わりに、同国に対する5つの主要な国連安全保障理事会の制裁決議を撤回するよう提案。米国はこの施設廃棄だけでは不十分で、北朝鮮に核兵器と燃料の引き渡しを要求し、話がまとまらなかった。

当時北朝鮮は、非核化への第一歩として西海衛星発射場を廃棄したとも表明した。ところが今月1日、この発射場を使って「非常に重要な実験」が行われた。

韓国との合同軍事演習を米国が中止し、人権侵害の批判をはじめとする「敵視政策」を見直すべきだと主張する北朝鮮の声も強まる一方だ。

完全、検証可能かつ不可逆的

米国は、北朝鮮の「完全、検証可能かつ不可逆的な非核化」を目指してストックホルムの協議に臨み、その第1弾として北朝鮮に実験の停止を迫ったという。韓国のある外交筋がロイターに語った。

複数のメディアは、米国が石炭や繊維の輸出に関する制裁の一時解除を提案する方針だったと報道したが、この外交筋によると、ストックホルムの協議は細部を話し合う段階に到達しなかった。

米国と韓国は、韓国から北朝鮮への観光再開など必要ならすぐに取り消しが可能な分野の制裁緩和を検討した半面、北朝鮮は2月の米朝首脳会談で5つの国連決議を名指ししたように、制裁解除に関する「システマティックな保証」を求めているという。

2016─17年に採択された国連決議は、主として北朝鮮の鉱物資源輸出を制限し、金融取引を禁止。これにより同国が少なくとも年間10億ドルの外貨収入を得られなくなることが見込まれた。

ただ先の外交筋は、米国は過去に実のある非核化を達成できないまま北朝鮮に多くのメリットを与えてきた過去があるだけに、最初に制裁を緩和するリスクは冒せず、制裁しか北朝鮮に圧力を加える手段がないと指摘した。

同筋によると、ストックホルム協議打ち切りに伴って米国側は次回の協議日程を決めようとしたが、北朝鮮は協力的ではなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ453ドル安 原油高と雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園で撮影された「恐怖の瞬間」映像にネット震撼
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中