最新記事

韓国政治

韓国保守派のホープを直撃した娘の不祥事

A Savior for Conservatives?

2019年12月4日(水)19時40分
テジョン・カン

複数の政党が洪を仲間に引き入れようと躍起になっているようだ YONHAP NEWS/AFLO

<文在寅側近の曺国前法相とまるで同じ展開、実業家の洪政旭は危機を乗り越えられるか>

韓国の最新世論調査によれば、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は前回調査から0.9ポイント下がって46.9%だった。2017年5月の就任直後には80%超の驚異的な支持率を記録した文だが、今は50%を下回る低空飛行が続いている。

支持率低下の大きな要因は、側近の曺国(チョ・グク)前法相をめぐるスキャンダルだ。文政権に不公正な社会慣行の撲滅と正義の実現を期待した多くの韓国人は、この一件にひどく失望させられた。

政治アナリストの間では、野党の保守派にとって国民の支持を取り戻すチャンスだという声が上がっている。問題は誰がそれを主導するかだ。最大野党・自由韓国党(旧セヌリ党)は、特に朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾訴追以降、厳しい状況が続いている。

現時点でよく名前が上がるのが、実業家の洪政旭(ホン・ジョンウク)だ。洪は韓国で最も影響力のある英字紙の1つコリア・ヘラルドを傘下に持つヘラルド・メディアの元会長で、2008年から2012年まで当時の与党ハンナラ党(2012年セヌリ党に改称)の国会議員を務めた。

政治家時代は、2つの主要政党間のギャップを埋めることに尽力した。韓国政界では日常的な光景だった国会での乱闘騒ぎに加わらないよう同僚を説得。オープンな議論のため、野党陣営の議員に接近することもいとわなかった。

最終的には、野党との合意の努力抜きで法案成立を強行した自党に抗議して議員の職を辞し、ビジネスの世界に戻った。だが、政界復帰を期待する声は今もある。

違法薬物の密輸で逮捕

本人は最近まで政界復帰に興味がなさそうに見えたが、今年5月になって所有するヘラルド・グループの株式47.8%を売却。政界復帰のサインではないかと、観測筋は色めき立った。洪がソーシャルメディアに韓国政治の現状を批判する文章を投稿すると、サインはさらに鮮明になった。

来年4月に総選挙を控える各政党は、躍起になって洪を仲間に引き入れようとしているらしい。市場も敏感に反応した。洪が政治的発言を行った後、釜山の放送局KNNの株価が18%強も急騰した。KNNは洪の姉が50%の株式を保有している。

だが9月、状況は暗転する。洪の19歳の娘が大麻やLSD、アデロールなどの違法薬物を密輸しようとした容疑で仁川国際空港の税関当局に摘発されたのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

デンマーク、女性も徴兵対象に 安全保障懸念高まり防

ワールド

米上院可決の税制・歳出法案は再生エネに逆風、消費者

ワールド

HSBC、来年までの金価格予想引き上げ リスク増と

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中