最新記事

政治指導者

フィンランド、34歳女性首相に託されたリベラルを救う使命

34-Year-Old Finnish Lawmaker to Become World's Youngest Prime Minister

2019年12月10日(火)16時25分
アリストス・ジョージャウ

貧しい家庭に生まれ、同性愛の母親に育てられたマリンは筋金入りのリベラル派? Vesa Moilanen/REUTERS

<現職世界最年少の首相が誕生したのは、寛容だけではないやむにやまれぬ理由がある>

北欧フィンランドでまもなく、世界最年少34歳の首相が誕生する。それも女性だ。

新たに国を率いることになったのは、フィンランドのサンナ・マリン元運輸・通信相だ。12月3日に辞任したアンティ・リンネ前首相の後任を決める投票で、連立与党第1党の社会民主党はマリンを選んだのだ。

リンネは、大規模ストライキへの対応を巡って連立与党の一角・中央党から不信任を突き付けられ、辞任に追い込まれた。

フィンランドで数日中に首相に就任する見通しのマリンは、フィンランド史上最も若い首相で、世界の現職首脳のなかでも最年少。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(39歳)と、ウクライナのオレクシー・ホンチャルク首相(35歳)を抜いた。フィンランドの女性首相は、マリンで3人目だ。

そればかりではない。マリンが率いる中道左派の連立政権に参加する他の4党は、党首がいずれも女性で、そのうち3人は35歳以下。左派連合がリー・アンデルソン(32歳)、緑の党がマリア・オヒサロ(34歳)、中央党がカトリ・クルムニ(32歳)、スウェーデン人民党アンナ・マヤ・ヘンリクソン(55)だ。

フィンランド次期首相と4人の連立与党党首



私を救った福祉を守る

年齢について問われると、マリンは次のように述べた。「自分の年齢やジェンダーについて気にしたことはない。考えているのは、自分が政治家になった理由と、有権者は私たちに何を託したのか、ということだ」

マリンが政界で頭角を表したのは、人口20万人あまりの故郷の都市タンペレで、若干27歳で市議会議長に就任したとき。タフで率直な指導力を発揮し、国政でも重要な位置を占める存在となった。事前の世論調査でも、次期首相として最も人気が高かった。

マリンは貧しい家庭に育った。「フィンランドの福祉と教育制度がなければ、ここまでくることは不可能だった」と、フィンランド紙に語っている。家族のなかで初めての大学進学者だったという。

彼女を育てたのは、母親とそのガールフレンド。マリンが若い頃にはまだそれをオープンにできる社会環境ではなく、疎外感を味わった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳が電話会談、プーチン氏はウ和平交渉巡る立場

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中