最新記事

香港デモ

香港デモ、中国軍が武力鎮圧に備え演習? 英国訪問の司法長官、抗議受け負傷か

2019年11月15日(金)17時15分

香港政府は、ロンドンを訪れていた香港のテレサ・チェン司法長官が「暴徒」に襲われたと非難した。写真は香港で撮影(2019年 ロイター/ADNAN ABIDI)

香港政府は15日、ロンドンを訪れていた香港のテレサ・チェン司法長官が「暴徒」に襲われたと非難した。

同長官は紛争解決や取引の場としての香港をアピールするため、ロンドンを訪れていたが、抗議する集団から「殺人者」「恥を知れ」と罵倒され、香港政府の声明によると「身体に深刻な危害」を受けた。これ以上の詳細は明らかにしていないが、ビデオ映像では同長官が地面に倒れる姿が映っている。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、同長官への攻撃を強く非難するとの声明を発表。

在英国の中国大使館は、チェン司法長官が地面に押し倒され、手を負傷したと発表。「数十人の反中や独立支持の活動家に囲まれ攻撃された」とし、「暴力的で法を守らない加害者」が暴力行為を国外にも広げていると非難した。

英警察によると、チェン司法長官は腕に怪我をしており、病院に搬送された。現時点ではこの件に関連して逮捕者は出ていないとしている。

中国は英国に対し正式な苦情申し立てを行い、当局が加害者を処罰するよう求めた。

中国外務省の香港出先機関も、在香港の英総領事館に強く抗議したことを明らかにした。

香港では15日も抗議活動が続いている。学校が休校となっているほか、一部の主要道路は封鎖。大学には学生がバリケードを築いて立てこもっている。

封鎖された主要幹線道路は一時、一部が開通したが、夕方のラッシュアワーに再度封鎖された。抗議デモは主導者不在の中進められているが、デモ参加者の間に分断が出ている可能性がある。

多くのデモ参加者は夜遅くまでに現場を離れたが、道路封鎖は続いている。

前日には、頭部にブロックが当たったとみられる70歳の街路清掃員が死亡。警察側は、マスクをしたデモ参加者が投げつけた物が当たったようだと説明。[nL4N27U1EG]香港政府の張建宗・政務司司長は記者会見で「香港が安全な都市だともはや言うことはできない」と述べた。

香港島と九龍地区を結ぶ香港海底トンネルは、デモ隊がバリケードなどを使って封鎖しており、深刻な交通渋滞が発生している。政府は企業に対し出勤時間を柔軟に変更するよう改めて求めている。

中心部では昼食時間帯に抗議活動が行われ、また東部の太古地区では禁止されているフェイスマスクを着けた会社員らが「香港を解放せよ。我々の時代の革命だ」と叫んだ。

31歳の女性は「政府は暴徒を非難したが、なぜこんなに多くの暴徒がいるのか、なぜ一般市民も彼らを支持しているのか考えもしない」と語った。

ビジネス街のセントラル(中環)地区近くにある中国人民解放軍の駐屯地を映した13日の映像では、10以上の部隊が、傘を持った偽のデモ隊に対する暴動鎮圧訓練を行っているような姿が確認できる。

香港の混迷が深まる中、ドイツ外務省は15日、ドイツ人2人が香港で身柄を拘束されたと明らかにした。

香港警察は違法集会参加などの容疑で外国籍2人を逮捕したと発表。逮捕した人物の年齢は22歳と23歳としている。

ドイツのビルト紙はこれに先立ち、香港の嶺南大学に交換留学生として在籍している学生2人の身柄が拘束されたと報じていた。大学からこの件に関するコメントは得られていない。

*情報を追加しました。

[香港 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

小売販売額10月は前年比1.7%増、家電増・食品マ

ビジネス

日経平均は小幅続伸で寄り付く、手掛かり欠き一時マイ

ビジネス

都区部コアCPI、11月は+2.8%で横ばい 生鮮

ワールド

イスラエル軍、パレスチナ人2人を投降後に射殺か ヨ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中