最新記事

韓国

ヤクルトが韓国で最も成功した日本ブランドになった理由

2019年11月11日(月)16時30分
佐々木和義

韓国版ヤクルトレディが果たした役割は大きい...... YouTube

<「日本にもヤクルトがあるのか」と尋ねられるほど韓国で認知されているヤクルト。その理由はなんだったのか......>

日本製品の不買運動が続く韓国で、多くの日本ブランドが売上減少に悩むなか、安定した販売を維持しているブランドがある。

1969年11月に日韓合弁企業が創業し、今年で50周年を迎える長寿企業で、韓国の乳酸菌飲料市場で70%のシェアを持つ韓国ヤクルトだ。在韓日本人が韓国人から「日本にもヤクルトがあるのか」と尋ねられるほど定着しているブランドのひとつだ。

韓国に馴染み深い乳酸菌

韓国人が購入したヤクルトは500億本、国民1人あたり970本に上り、2008年に売上1兆ウォン企業に仲間入りした。

ヤクルトが韓国で浸透した背景は主に3つある。韓国人に馴染み深い乳酸菌の飲料であり、また、日本と同じヤクルト・レディによる販売方式、そして、消費者の声を反映した商品開発だ。

1971年、韓国でヤクルトが販売された頃は、世論は好意的ではなかったという。「菌にお金を払って飲むのか」という非難もあったが、韓国ヤクルト創業者の尹徳炳(ユン・ドクピョン)会長は、下痢や便秘予防に効果的な乳酸菌の効能をアピールして、無料試飲を行うなど積極的なマーケティングを展開した。

韓国人はキムチやマッコリ、チョングクチャンなど乳酸菌発酵食品をよく摂取する。近年は納豆の人気も高い。積極的なマーケティングが、消費者の認識改革と販売につながった。発売開始から6年目の77年には1日あたりの販売量が100万本を超え、国民の間に定着しはじめた。

韓国版ヤクルトレディが果たした役割

「ヤクルト・アジュンマ」による販売システムは大きな役割を果たしている。時に男尊女卑の風潮を感じることもある韓国で「アジュンマ」と呼ばれる女性たちは強い行動力と忍耐力を併せ持つ。ヤクルト・アジュンマたちは担当地区を訪問し、夏の暑さや冬の寒さをものともせず、ヤクルトを売り続けた。

韓国ヤクルトが販売を開始した1970年代、女性の職場は限られていた。長時間低賃金の販売員などで、子を持つ主婦の就労は不可能に近かった。その時代、ヤクルトはパート制を採用して、子育て中の主婦を中心に希望者が殺到した。しゃれた帽子とユニフォームを着用した女性販売員がカートを引くスタイルは、それまでの配達業のイメージを一変させ、女性配達員の社会的地位を高めた。「ヤクルト・アジュマ」は憧れの職業にもなったという。

当初47人だった「ヤクルト・アジュンマ」は98年には1万人を超え、2017年には1万3000人に達している。早期退職者が多い韓国で、勤続10年を超える販売員が5000人を超えている。

韓国ヤクルトは2014年から75億ウォンを投入し、電動カートを導入する。販売員たちは手動式カートを引いて飲料が詰まったアイスボックスを運んでいたが、トラックで宅配を行うインターネット販売業者との競争が激しくなり、「自走式冷蔵庫」を開発した。

ヤクルトから相談を受けたメーカーはどのような天候でも、また、韓国特有の坂やでこぼこ道が多い道でも動作するカートの開発に苦心する。16種類の試作車を実地に試し、自動式冷蔵庫"ココ"が誕生した。韓国メーカー4社が製造する自走式冷蔵庫"ココ"は1万台を超えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ヒズボラ、対イスラエル攻撃停止 停戦に関し公式見解

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射、2日連続 韓国の緊張緩和

ビジネス

インド中銀が金利据え置き、紛争で見通し不透明 イン

ワールド

平和維持要員死亡、イスラエルとヒズボラに責任 国連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中