イラン政権転覆を狙う反体制派が抱える闇

Bracing for the Fall

2019年10月25日(金)19時00分
ジョナサン・ブローダー(外交・安全保障担当)

もっとも、ほかの反体制組織の言い分は違う。彼らはMEKに足並みをそろえようと呼び掛けても、拒絶されてきたという。「気に食わない提案にはいっさい耳を貸さない」と、ある反体制組織のリーダーは言う(反体制勢力内の駆け引きに関する微妙な問題であることを理由に、匿名を条件に取材に応じた)。

元国王の息子が抱く野望

トランプ政権がイランを経済的に締め付けるなか、ここにきて元国王の息子レザ・パーレビがイランの現体制に対する批判を強めている。自らのリーダーシップの下に反体制勢力を結集し、民主的なイランを築こうと主張し始めたのだ。

とはいえ、パーレビはワシントン近郊で生活しているにもかかわらず、米外交関係者の間での存在感は乏しかった。カリスマ性と決意に欠けるとの評も聞こえてくる。1980年には自らがイラン国王だと名乗る声明を発表したが、のちに撤回している。

1980年代に、アメリカの情報機関がパーレビにある提案を持ち掛けたことがあったという。米軍の支援の下でペルシャ湾のイラン領の島、キッシュ島に王政派の部隊を上陸させようという内容だった。だがこの提案に対し、パーレビがアメリカ側に最初に尋ねたのは、撤退戦略についてだったという。

それでも2018年後半以降、パーレビは存在感を増すべく複数のシンクタンクと会談。現体制打倒に燃える反体制派として自らが果たし得る役割を説明してきた。政治的移行の共通計画策定に当たって自分は反体制派のリーダーになれると、彼は考えている。既に亡命イラン人の科学者や研究者や専門家と共に、イランで民主主義政府が直面するだろう問題に取り組む「フェニックス・プロジェクト」を始動。だがイランを統治する個人的野心は全くないという。

パーレビの支持者は欧米に亡命した複数の王政派グループのほか、数は不明だがイラン国内にもいて、一部は2017年の反政府デモで王政回帰を訴えた。

過去数年、欧州の亡命イラン人が始めたイラン向け衛星テレビ局数社が、王政時代への郷愁を誘うようなペルシャ語の番組を放映している。だが王政のペルシャ優越主義を忘れていないイランの民族的少数派には、パーレビは今も人気がない。一方、イラン系アメリカ人は、パーレビが指導的役割を担うのなら、亡き父親の独裁的な統治とは距離を置くよう強く要請している。

ワシントン中近東政策研究所のパトリック・クローソンは、パーレビは英王室のように形式的な王室の役割を好むのではないかと示唆。「彼はエリザベス女王になることを望んでいる」と、アトランティック・カウンシルのスラビンに語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中