最新記事

香港デモ

香港行政長官、住宅不足緩和措置を公表 長引く抗議デモの一因解消図る

2019年10月16日(水)17時56分

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真)は、動画配信された施政方針演説で、長引く抗議デモへの対応として、住宅不足の解消に向けた措置を打ち出した。写真は香港で撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、動画配信された施政方針演説で、長引く抗議デモへの対応として、住宅不足の解消に向けた措置を打ち出した。

長官は先に、3回目となる施政方針演説に臨んだが、開始後に民主派議員がデモ隊のスローガンにもなっている「ひとつも欠けることない5大要求」と叫んで妨害、中断を余儀なくされた。

その後、動画配信された演説で長官は、香港政府は住宅事業を劇的に増やし、公共住宅の販売を加速すると表明。香港では不動産価格の高騰が若者を中心に国民の怒りを買っており、デモの一因になったと考えられている。

長官によると、土地収用条例に基づき、新界地区にある民間所有地約700ヘクタールを取得する計画で、これに加えて450ヘクタールも収用する予定だという。

香港の有力な不動産開発業者からの用地取得は、ここ数年で最も大胆な措置の1つとなる。政府の推計によると、恒基兆業地産(ヘンダーソンランド)や新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)、新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)といった不動産大手は1000ヘクタール以上の農地を抱えているという。

長官は「さまざまな所得層の人々が住宅を保有する機会を生み出し、香港で幸せに暮らせるようにする決意だ」と表明。「すべての香港市民とその家族が住宅問題にこれ以上悩まないよう、香港に自分たちの住宅を持てるようにするという明確な目標をここに掲げる」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

長官はすべての不動産開発業者に協力を要請。具体的にどのように作業を進めるのかについて、これ以上の詳細は明らかにしなかった。

発表を受け、香港株式市場では、不動産株指数が2%以上値上がりした。

香港では1997年の中国返還前、政府が土地所有者に補償をした上で公共のために土地を活用することが度々あったが、中国返還後に、民間の不動産開発業者からの土地収容を実現した行政長官はいない。

長官は「一国二制度」を支持するとも表明。香港経済は低迷しており、短期的に人員削減の圧力が強まっているとの認識も示した。

*内容を追加しました

[香港 16日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

FRB議長、「第3の使命」長期金利安定化は間接的に

ワールド

アルゼンチンGDP、第2四半期は6.3%増

ビジネス

米大手銀、最優遇貸出金利引き下げ FRB利下げ受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中