最新記事

インタビュー

元CIA局員たちへの取材で炙り出された、日米の諜報活動の実態

2019年9月18日(水)18時20分
小暮聡子(本誌記者)

CIAが極秘扱いにしていたキヨ・ヤマダの生涯を明らかにした山田敏弘氏 Hisako Kawasaki-NEWSWEEK JAPAN

<CIAのスパイを養成していた日本人女性キヨ・ヤマダの人物伝『CIAスパイ養成官――キヨ・ヤマダの対日工作――』(新潮社)を上梓した山田敏弘氏は、これまで各国の諜報機関関係者に取材してきた。山田氏に聞く、日本にもあるというCIAの養成学校の存在と、元CIA局員が指摘する日本のJICAとCIAの類似性とは>

kiyo-cover.jpg

またひとつ、埋もれていた歴史が発掘された。

このほど発売された新著により、戦後、アメリカのCIA(中央情報局)に日本に送りこむスパイを育成していた日本人女性がいたことが分かったのだ。

その女性の名はキヨ・ヤマダ。日本で生まれ育った生粋の日本人で、1954年に渡米し、1969年に46歳でCIAに入局。日本語インストラクターとしてCIA諜報員に日本語や日本文化を教えていた人物だ。日本のメディア関係者をスパイにするための工作に関わったり、企業にCIAスパイを送り込む工作にも従事していたという。

国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に安全保障問題の研究員として留学中の2015年にキヨ・ヤマダについて取材を始め、今年8月に『CIAスパイ養成官――キヨ・ヤマダの対日工作――』(新潮社)を上梓した。

そこに記されているのは、1922年に東京で生まれたキヨが戦後、日本を捨てるようにしてアメリカに移り住み、CIA局員として対日工作に関わりながら2010年12月27日に88歳で他界するまでの波乱に満ちた人生だ。

山田氏はこれまでにも、CIAだけでなくイギリスやイスラエル、インドやパキスタンなど世界の諜報機関の取材を続けてきた。今回もCIAが極秘扱いにしていたキヨの身分や任務を炙り出す過程で、複数の元CIA局員から直接話を聞いたという。

取材を通して見えてきたキヨ・ヤマダという元CIA局員の姿と、現在の日米の諜報活動の実態について聞いた。

***


――キヨ・ヤマダはどのような経緯でCIAに入ったのか。

キヨは戦後3年間、神奈川県藤沢市にあった湘南白百合学園で英語の臨時講師を数年務めていたが、もともと家族との関係が悪かったことと、戦前から西洋文化への憧れがあったことからフルブライト奨学生制度に応募し、合格してアメリカに留学した。

だが念願叶ってアメリカに渡ったものの、「敗戦国」から来た彼女が米空軍に勤務するアメリカ人男性と結婚して家庭に入り、夫の仕事で基地を転々とする生活が続けていくうちに自分を見失う。それでも日本で教師として培ったものを生かしてCIAに入り、アメリカに自分の居場所を探しながら生きていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中