最新記事

宇宙開発

中国とインドが月面探査の先に見る野望

To the Moon and Beyond

2019年9月21日(土)12時43分
ナムラタ・ゴスワミ(インド防衛研究分析センター元研究員)

宇宙で本格的な「領有権争い」が始まった? NASA

<次々に挑む月面探査ミッションは軍事利用、資源探査、そして移住計画への布石だ>

9月7日、インドの無人月面探査機「チャンドラヤーン2号」に搭載されていた着陸機「ビクラム」が、月面の上空約2.1キロまで近づいた。

着陸予定地点は、月の裏側に位置する南極の近く。南緯約70度にある2つのクレーター、マンチヌスCとシンペリウスNの間の高地だ。豊富な鉱物資源が存在すると考えられている月の南極付近で、地質などを調べる重要なミッションを担っていた。

チャンドラヤーン2号から切り離されたビクラムは少しずつ高度を下げ、軟着陸の態勢を整えた。しかし、いよいよ着陸という最後の段階で、バンガロールにあるインド宇宙開発研究所(ISRO)の管制室との交信が途絶えた。

チャンドラヤーン2号は現在も月の周回軌道上にあり、今後1年間、月の南極と北極の画像撮影や月面の観測などを続ける。ビクラムと探査車「プラギャン」が軟着陸に成功していれば、月面の昼1日(自転周期の違いから、昼1回、夜1回がそれぞれ地球上の約14日間に相当)をかけて、探査や撮影を行うはずだった。

今回のミッションは、打ち上げが技術的な問題で7月22日に延期されたものの、その後は計画どおり進んでいた。チャンドラヤーン2号は8月20日に月の周回軌道に乗り、最初に撮影した月面の写真も地上に届いている。

9月2日にはビクラムの切り離しにも成功した。インドが月面軟着陸に成功すれば、アメリカ、旧ソ連、中国に続いて4カ国目となり、宇宙大国の仲間入りをするはずだった。今年4月にはイスラエルの民間団体、スペースILが月面軟着陸に挑んだが、残り数分のところで通信が途絶え、探査機は月面に衝突したとみられる。

月面科学基地の本気度

これまで月の裏側に着陸したのは中国だけで、今年1月に無人探査機「嫦娥4号」が軟着陸に成功している(ただし、南極の近くではなかった)。

嫦娥4号から切り離された探査車「玉兎2号」は、過酷な月の夜を8回乗り越え、あまり知られていない月の裏側の観測を続けている。地球上の7月25日、月面の8日目(月の1日は地球上の約1カ月に相当)、玉兎2号は小さなクレーターでゲル状の見慣れない物質を発見したと報じられた。

今この時代に、月面探査計画が戦略的に重要な意味を持つ理由は何か。

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インサイト:「院内感染」の重い代償、医療現場で続く

ワールド

フィリップ仏首相が辞任、マクロン大統領は内閣改造へ

ビジネス

日経平均は続伸、米国株高を好感 海外投資家不在で薄

ビジネス

ウーバー、東京でタクシー配車事業を開始

MAGAZINE

特集:Black Lives Matter

2020-7・ 7号(6/30発売)

今回の黒人差別反対運動はいつもとは違う──「人権軽視大国」アメリカが変わる日

人気ランキング

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」

  • 3

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 4

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 5

    北京で6月にクラスター発生したコロナウイルス、東南…

  • 6

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 7

    コロナ禍なのにではなく、コロナ禍だからBlack Lives…

  • 8

    新型コロナが細胞に生やす不気味な触手の正体は

  • 9

    ブラックホール爆弾から無限のエネルギーを取り出す…

  • 10

    アメリカはコロナ感染の「第2波」に入ったのか?

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」

  • 4

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 5

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 6

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 7

    BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現…

  • 8

    韓国「炭酸カリウム」を不当廉売? 経産省が調査開…

  • 9

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 10

    北京で6月にクラスター発生したコロナウイルス、東南…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

  • 4

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 5

    ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持…

  • 6

    自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされ…

  • 7

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 8

    宇宙に関する「最も恐ろしいこと」は何? 米投稿サ…

  • 9

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 10

    「この貞淑な花嫁は......男だ」 イスラムの教え強い…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月