最新記事

日本社会

フルタイムで働いても非正規では大半がワーキングプアなのが日本の現実

2019年8月14日(水)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

他の国はどうか。OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」では、各国の成人に労働時間と年収を尋ねている。年収は「有業者全体の中でどのあたりと思うか」を問う形式で、認知の歪みの影響が出るが、参考にはなるだろう。週35~45時間働く労働者を取り出し、年収の回答分布をグラフにしてみた<図2>。ジェンダー差も見るため、男性と女性で分けている。

data190814-chart02.jpg

青色は年収が下位25%未満と答えた人の割合だが、日本はこのゾーンが広い。女性では半分を超えており、<図1>の所得分布の結果とも符合する。お隣の韓国も似たようなタイプだ。

対して欧米諸国では、オレンジ色の中間がマジョリティとなっている。明瞭なジェンダー差もない。週35~45時間、普通に働けば普通の暮らしができる社会と言える。日本や韓国に比べて、その実現の度合いが高いのは確かだろう。

為すべきは最低賃金の遵守、いや引き上げだ。今回のデータを見ると、「最低賃金1500円を」という呼びかけにも合理性があるように思えてくる。それでは会社がもたないというなら、BI(ベーシックインカム)による補填を考えてもいい。

AIやICT技術の進歩により、1日8時間労働で事足りる時代はすぐそこまで来ている。それにもかかわらず、現状が追い付いていないのは、働き方に無駄があること、富の配分に偏りがあることによる。これらを正すだけでも、状況はだいぶ好転するのではないか。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    OECD「PIAAC 2012」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中