最新記事

テクノロジー

グーグル対オラクル ソフト開発の未来を決める巨大テック企業同士の最終決戦

Google vs Oracle

2019年8月1日(木)15時03分
ロジャー・パーロフ(ジャーナリスト)

google190806b.jpg

グーグルに損害賠償を請求したオラクル JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES


1879年の判例が頼り

「アンドロイド以前は、JAVAコードを使いたい業者は例外なく使用ライセンスを取得していた。ブラックベリーもノキアもだ」。オラクル側は法廷に提出した文書でそう述べている。

もしアンドロイドがなければ、オラクルの持つJAVAがスマートフォンの標準OSになる可能性があった、とも主張している(JAVAを開発したのはサン・マイクロシステムズだが、同社は10年初頭にオラクルの傘下に入っている)。

また、オラクルが勝てばソフトウエア業界が壊滅するというグーグル側の主張も一蹴。14年5月と18年3月の控訴審判決でオラクルが勝っても異変は起きなかったと反論している。

意外なことだが、APIに関する訴訟の先例となる最高裁判決が下されたのは実に1879年だ。その判決で著作権の限界が定義され、著作権と特許権の違いが明らかにされた。

争われたのは、独自の簿記方式を開発したチャールズ・セルデンが、自身の著作に挿入した専用記入用紙の権利だ。これに酷似した記入用紙をW・C・M・ベーカーという人物が売り出したので、故セルデンの妻が著作権侵害でベーカーを訴えた。しかし、負けた。

最高裁の判決によれば、そもそも特許はアイデアを保護することができるが、著作権は特定の表現のみを保護する。この事案で言えば、保護されるのはセルデンが簿記の方法を説明するために使った文言だけということになる。つまり「著作権は著者に対し、著者が記した特定作業について、その実行方法に対する独占権を認めるものではない」ということだ。セルデン式簿記の実行方法に対する独占権がない以上、実行に必要な記入用紙の独占権もあり得ない。

後に、この判例は議会によって著作権法に書き加えられている。そこには、著作権は「いかなるアイデアや手順、プロセス、システム、実行方法にも及ばない」とある。

今どきの例で言えば、近藤麻理恵が書いた片付けに関する本の著作権は彼女に属するが、それを読んだ人が彼女流の片付けを実行しても著作権の侵害には当たらないということだ。

この解釈が、140年後のオラクル対グーグル訴訟でも主要な争点の1つとなる。ちなみにオラクルは当初、グーグルを特許権侵害でも訴えていたが、12年の一審で否定され、オラクルが控訴しなかったため、既に判決が確定している。

最高裁の審理では、APIとは何かを厳密に検討することになるだろう。基本的に、APIのコードには2つの要素がある。特定のタスクを実行するプログラム(実装コード)と、それを呼び出すためのデクラレーション(宣言)コードだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中