最新記事

テクノロジー

グーグル対オラクル ソフト開発の未来を決める巨大テック企業同士の最終決戦

Google vs Oracle

2019年8月1日(木)15時03分
ロジャー・パーロフ(ジャーナリスト)

「宣言コード自体はプログラムではない」と、グーグル支持の科学者78人の連名で提出された文書は主張する。「(宣言コードは)プログラムがいかなるタスクを実行するかを記述するだけで、どのように行うかを具体的に指示するものではない」

アップルと競うために

重要なのは、グーグルが流用したのはJAVAコードのごく一部、それも宣言コードだけだという点だ。アンドロイドは168個のソフトウエア・パッケージで構成されているが、そのうち37個でJAVAの宣言コードをコピーしている。

だがそれらの宣言コードが呼び出すタスクの実装コードは、アンドロイドの開発者が新たに書き換えている。グーグルが提出した書面によると、コピーされたコードは「アンドロイド全体で1500万行あるコードの0.1%未満」にすぎない。

グーグルの主張によれば、JAVAの宣言コードを流用したことには正当な理由がある。アンドロイドの最初の商用デバイスが登場した08年後半の時点で、アップルのiPhoneは1年以上前から市場に出回っていた。そしてグーグルは、先行するアップルのiOSに対抗するものとしてアンドロイドを位置付けていた。

JAVAの宣言コードをそのまま使えば、既に主流のプログラミング言語だったJAVAの習得に時間を費やしてきた無数のデベロッパーがアンドロイド用アプリを開発しやすくなる。言い換えれば、アンドロイドが競争力を持つにはJAVAの宣言コードが必要だった。

「新しいプラットフォームで勝負するためには」と、反トラスト協会のスタッズは言う。「消費者に既存のプラットフォ―ムから乗り換えさせるだけでなく、デベロッパーに全く新しい言語を学ばせなくてはならない」

前出の科学者らの意見書によると、グーグルがやったような流用は「長年にわたって、どこでも行われてきた」ことであり、「コンピューター技術の重要な革新にとって不可欠であって、何十年にもわたりソフトウエアにおける歴史的な革新を推進してきたもの」だという。

グーグルは、流用したJAVAの宣言コードは何かを表現するツールではないため、著作権侵害には当たらないと主張。プログラムを起動させるだけで、キーボードのようなものだという。Aのキーを押せば文書作成ソフト(マイクロソフトなら「ワード」)が自動的に起動し、画面にAの文字が現れる。だが「ワード」は著作権の対象になるが、キーボードはならない。そういう理屈だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中