最新記事

エンターテインメント

吉本・ジャニーズの激震が示すエンタメ界の危機 芸能事務所とテレビ局は共同体のままでいいのか

2019年7月26日(金)15時45分
吉川 圭三(KADOKAWAコンテンツプロデューサー) ※東洋経済オンラインより転載

記事掲載があってからこの間、事務所とタレントの間に相当な議論とコンタクトがあったにもかかわらず、その経緯が初めて公に語られたのは事務所ではなく芸人が独自に開いた記者会見の場であったことも異様だ。それは安倍政権の命運を占いかねない参議院議員選挙の前日の土曜日であった。一部、この土曜日から日曜日までの報道・情報番組のかなりの部分がこの吉本報道に費やされたことに苦言を呈する向きもある。

ただ、お笑いタレント2人の単なる謝罪会見に終わると思えた内容が、彼らの所属事務所のさまざまな内部事情の話に及ぶに従って会見の雰囲気が変わって来た。「これはただ事ではない」と会見場にいた報道陣も、AbemaTVなどで生放送を見ていた一般の方々も思ったはずである。

現に松本人志はその日の夜、新宿の本社で緊急に吉本の幹部に会っている。明石家さんまは20日夜のMBSラジオで「(宮迫を)ウチの(個人)事務所にほしい」「何があったって、宮迫側のフォローをしてあげようと」「これで吉本興業が俺(さんま)に対して『そんなことするなら会社やめてもらおう』ってなったら仕方のないことで」とまで笑いに包みながら話している。

ビートたけしと明石家さんまも場外乱闘に参戦

このラジオは20日より前に収録されており、宮迫がさんまに電話で助けを求めたとされている。明石家さんまにここまで言わせるのは吉本側の対応に本人が相当に怒り心頭であることは確かである。

吉本興業所属ではないが20日放送のTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」でビートたけしは「猿回しと同じで芸人は猿と一緒。猿が人を噛んだからといって、猿に謝らせたらダメ。飼ってる奴が謝らないと。」との例え話で"強烈に芯を食った物言い"をし、続けて「こういう姿を見せた芸人を見て、誰が見て笑うんだってなる。だからこれをやってくれるなと思うわけ。芸事は、そういうことを全部忘れて明るく笑わせることが芸。それをやらせてしまう事務所がおかしいって」と猛烈に早口で批判し「闇営業」しなくてはいけない芸人に対する会社側の最低保証にまで話が及んだ。

「(事が起こった時に)事務所とみんな出て『すいません』でそれで済んでたんだよ。『謹慎させて出直します』って済んだことなのに。」と初期対応のまずさを指摘した。

私はビートたけしと明石家さんまと長年仕事をしてきた仲であるので、彼らがどれだけこの案件に苛立ちを覚え激憤しているかが手に取るようにわかる。確かに宮迫博之が早めに「金銭授受があった」と言い事務所の然るべき人物と記者会見すれば良かったのにまるで"臭いものに蓋をするように"解雇をちらつかせ延々と情報開示を引き延ばし、挙句の果てに堪え切れなくなった2人の芸人が異例な記者会見をする羽目になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京ガス、25年3月期は減益予想 純利益は半減に 

ワールド

「全インドネシア人のため闘う」、プラボウォ次期大統

ビジネス

中国市場、顧客需要などに対応できなければ地位維持は

ビジネス

IMF借款、上乗せ金利が中低所得国に重圧 債務危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中