最新記事

ファクトチェック文在寅

「韓国の反論は誤解だらけ」

ILLUSION THEORY

2019年7月25日(木)18時50分
古川勝久(安全保障問題専門家、元国連安保理北朝鮮制裁専門家パネル委員)

幅広く流通している汎用品でも、兵器目的に転用されることがしばしばある。例えば、北朝鮮は先進国から汎用品の電子部品や金属などを不正調達して、弾道ミサイルや無人機等に使用した。このため、海外の取引相手や貨物の用途次第では、経産省の輸出許可が必要になる場合がある。つまり通常、輸出許可が不要な物品でも、兵器転用の懸念が払拭できない取引については、輸出許可が必要になる。これを「キャッチオール規制」という。

世耕大臣は7月3日付のツイートで、韓国にはキャッチオール規制の実効性の面で問題があり、「不適切事案も複数発生していた」と指摘している。事実、韓国国内では、キャッチオール規制の違法輸出が何件摘発されたのか、情報すら開示されていない。

輸出の手間が増えるのは日本

韓国がホワイト国から外れると、日本企業は韓国側との個別の契約ごとに、「キャッチオール規制に関する輸出許可が必要となるか」自分で確認しなければならない(事務手間が増えるのはあくまでも日本企業と経産省であって、韓国企業ではない)。ただし、キャッチオール規制で許可が必要になる輸出は実際には極めてまれで、許可申請件数はほとんど増えないと思われる。

20190730issue_p29fact.png

なお、日本にとって韓国以外の「ホワイト国」は現時点(7月17日)で26カ国ある。貿易相手国の大半は「非ホワイト国」だ。韓国がホワイト国から除外されても、対韓輸出に係る手続きがノーチェックではなくなるだけで、ASEAN諸国や台湾向けの輸出に比べれば事務手続き面での負担は軽い。

もう1つ経産省が発表したのは、輸出管理のもう1つの枠組みである「リスト規制」に関する措置だ。軍事転用可能な物品や技術の中でも、特定の品目やスペックを有する物品を輸出する場合には、原則輸出許可の取得が必要とされる。対象となる物品や技術は政令や省令等で定められており、これらの輸出規制は「リスト規制」と呼ばれる。もともと、韓国も参加する国際的な輸出管理レジームで規制対象と定められた物品・技術が大半である。

輸出許可には「個別許可」と「包括許可」の2種類がある。原則は個別許可であり、日本企業は、海外の顧客との輸出契約ごとに経産省から輸出許可を取得する(出荷ごとではない)。これに対して、契約にかかわらず一定期間(3年間)ずっと利用可能な許可を「包括許可」という。

契約に基づく貨物の場合、通常は一度許可を得れば原則その有効期間中に何回でも輸出が認められる。例えば、韓国企業への年間輸出契約に対して個別許可が下りれば日本企業は契約に基づく貨物を毎月、輸出することができる。貨物を輸出する都度、経産省の許可が必要となるわけではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、EUにメタン排出法の適用除外を要求=政府文書

ビジネス

ウォン安と不動産価格上昇、過剰流動性だけが背景では

ビジネス

12月の豪消費者信頼感指数、悲観論が再び優勢 物価

ビジネス

ベトナムEVビンファスト、対インドネシア投資拡大へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中