最新記事

セキュリティ

米中対立の発火はポーランドから ファーウェイ「スパイ」事件の全貌

2019年7月11日(木)12時32分

米国とポーランドの接近

ポーランドの政府当局者は、中国との通商関係の強化に前向きだと発言しているが、ドゥダ大統領は、港湾や空港も含めた戦略的なインフラへの投資には反対だと話す。ポーランドと中国の関係は、ロシアからの脅威が増大したと考えるポーランドが、米政府との関係を強化したことでも冷え込んだと、アナリストは指摘する。

ポーランド政府の当局者によると、中国の対外情報機関は、市場をより詳細に把握して自国企業のビジネスに役立てるため、ポーランドの経済と政治への監視を強化しているという。「われわれの機関はこうした動向を把握し、追跡している」と、この政府関係者は話した。

今回のスパイ容疑事件は、ポーランドと中国の関係をさらにこじれさせた。

「このような活動が国内で行われることは容認できず、われわれの関係は袋小路にはまっている」と、ドゥダ大統領は話し、「特に、通信技術のような戦略的でセンシティブな分野が関わる場合は容認できない」と付け加えた。

王容疑者の友人で、ともに逮捕されたドゥルバイヴォ容疑者は、ポーランド政府の上層レベルで仕事をしていた。国家安全保障の機密事項に関わる人々や部署と仕事をすることもあった。

サイバーセキュリティと電気通信の専門家であるドゥルバイヴォ容疑者は、40歳代後半とみられる。ビジネス交流サイトのリンクトインに登録された同名のプロフィールによると、20年以上にわたり内務省や国内対応の情報機関であるISAに勤務していた。ロイターは、ここに記載してある肩書の多くがドゥルバイヴォ容疑者の実際のものだったことを確認した。

ドゥルバイヴォ容疑者は2009年にISAに入り、電気通信やサイバーセキュリティを担当。当時のISA長官に助言をすることもあったと、一緒に仕事をした人や、地元メディアは説明している。

リンクトイン上の情報によると、ISAに4年以上勤務し、同機関では珍しい対外向けの仕事も担当していた。サイバーセキュリティについてテレビ取材などを受けており、2010年の地元局のインタビューでは、中国は「ハッキングの主導国」だと述べていた。

ポーランドの電子通信局によると、ドゥルバイヴォ容疑者は2012年5月にISAから出向してきた。最初の2年間は当時局長だったマグダレーナ・ガイ氏のアドバイザーとして働き、2016年まで在籍した。

ガイ氏は、ドゥルバイヴォ容疑者とは友人だったと話し、「数年一緒に働いたが、非常に愛国心が強い印象だった」と振り返った。

ドゥルバイヴォ容疑者は2012─15年にかけ、軍の技術大学で行われた光ファイバー通信ネットワークを経由した機密情報の窃取を防ぐシステム開発という、極めて機密性の高いプロジェクトに関わっていた。同容疑者の逮捕後、当局はこのプロジェクトに詳しい人物少なくとも2人から事情聴取した。

地元メディアによると、ドゥルバイヴォ容疑者は2016年、電子通信局で、ローマ法王のポーランド訪問の警備を担当する専門家らと仕事をした。翌2017年、同容疑者はISAを退職。その年10月に、仏オランジュ傘下のポーランド通信大手オレンジ・ポルスカのコンサルタントに就任した。同容疑者は逮捕後、この職を退いたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:百貨店が「体験型ショッピング」に活路、客

ビジネス

アングル:「高市ラリー」再開か、解散検討報道で思惑

ビジネス

トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上

ビジネス

関税返還となった場合でも米財務省には十分な資金=ベ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 8
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中