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乱世のゲーム業界にレトロなドット絵アートで挑む

A Guppy Takes on the Whales

2019年6月14日(金)17時10分
モ・モズチ

「大衆受けを狙わない」

ほかにもチャックルフィッシュは、インディーズのデベロッパーと提携して販売した11タイトルで成功を収めている。うまくやるコツは「ただ見守ること」だと、カトカスは言う。「どんなゲームにするか口出ししないし、開発にも携わらない。多くのパブリッシャーは、うちのようなやり方をしない。デベロッパーとの間に、相当の信頼関係がないとできないから」

チャックルフィッシュは小所帯だからこそ、デベロッパーとより濃密な関係を築くことができる。同社から今年4月に『パスウェイ』を発売したサイモン・バックマンは、チャックルフィッシュは開発に干渉してこないし、あまり金をかけないところもいいと言う。

「巨額の資金を投じると、リスクを最小限に抑えて、安全パイのコンセプトでゲームを作ることになる」と、バックマンは言う。デベロッパーとしては大手には却下されそうなコンセプトも、チャックルフィッシュならチャンスがあるかもしれない。

昨年9月に発売された『タイムスピナー』のデベロッパー、ボディー・リーも同じ意見だ。「大衆受けを狙わなくていい。自分たちが好きなゲームだけを作れるところがいい」

チャックルフィッシュでは毎年、何千本ものソフトや何百もの企画の中から、どのソフトを発売するかを選ぶ。決定する際の基準は、自分たちの気に入ったゲームならユーザーも気に入ってくれるという直感だ。

チャックルフィッシュが選ぶソフトはいずれも、スーパーファミコンやメガドライブのような昔ながらのゲーム機で遊びたくなるレトロなアートスタイルが特徴だ。意図してそういう作品を選んでいるというより、偶然そうなっているとカトカスは言う。「美的な部分について特別な基準は設けていないけど、ドット絵のゲームに引き付けられる傾向はあるかな」

カトカスは『スターデュー・バレー』から『パスウェイ』『タイムスピナー』に至るゲームの販売で成功したカギは、たった1つの事実に集約できるとも語る。

「僕らはとにかく、たくさんゲームをやってるから」と、カトカス。「本当にたくさんやってるんだ」

<本誌2019年6月18日号掲載>

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