最新記事

資本主義

さよならGDP 「ニューエコノミクス」は地球を救うか

2019年5月19日(日)20時24分

現状打破の挑戦

この種の取組みをさまざまな形で追及している企業や地域グループは多いが、そうした哲学が最も顕在化しているのは「グリーン・ニューディール」である。

若者主導の「サンライズ・ムーブメント」の支持を受けるアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員が提唱する「グリーン・ニューディール」は、社会的公正を、再生エネルギーや気候変動といった政策課題と結びつけようとしている。

これに対し、米国の主流派エコノミストらは、政治的な立場の如何にかかわらず、炭素税や環境技術への優遇制度といった形で既存のシステムに修正を加え、二酸化炭素排出量を削減するだけで十分だ、と反論している。一方で共和党や一部の投資家は、「グリーン・ニューディール」に激しい批判を加えている。

ヘッジファンドであるキャピタリスト・ピッグのジョナサン・ホーニグ氏は3月、米テレビのフォックス・ビジネスに対し、「70兆、80兆、いや90兆ドル規模のコストがかかる。社会主義者がエネルギー政策を乗っ取ろうとしている」と語った。「まぎれもない、正真正銘の社会主義だ」

だが、複数年にわたる2つの画期的な科学研究では、生態系に対する企業主導の攻撃があまりにも加速しているため、小手先の対応では手遅れになっているという結果が出ている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月、地球温暖化に歯止めをかけられるよう二酸化炭素排出量を迅速に削減するには、本格的に経済を変革するしかない、という結論に達した。

6日には、130カ国で並行して行われた科学調査により、産業社会によって100万種の生物が絶滅の危機に瀕している、との結果が報告された。報告書を執筆した145人の専門家は、動植物の絶滅ペースが、過去1000万年に比べて数千倍も速くなっているという結論を出している。

報告書の共同代表執筆者である人類学者のエドゥアルド・ブロンディジオ氏は、「成長優先のマインドセット」を捨てるべき時だ、と述べている。「『これまで通りのやり方』を終らせなければならない」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中