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資本主義

さよならGDP 「ニューエコノミクス」は地球を救うか

2019年5月19日(日)20時24分

若者の目に焦燥感

「ニューエコノミクス」支持者のあいだでも賛否が分かれる問題の1つは、温室効果ガス排出量を迅速に削減するために経済成長を完全に止めてしまう必要があるほど、現時点で破滅的な気候変動のリスクが差し迫っているのか、という疑問だ。

持続可能な「グリーン成長」の余地がまだ残っているという考える人もいるが、21世紀版「暗黒時代」に転落する恐れから、各国政府が今すぐ消費を急速に削減するよう監視することを求める人もいる。

世界経済の再編という課題を否定する人はいないが、世界的な学生ストライキや、気候変動対策の強化を求める団体「エクスティンクション・レベリオン」による国際的な市民不服従行動といった環境行動主義の高まりによって、新たな議論が生まれている。

「若者たちの目に浮かぶ焦燥感と厳密な科学が合流したことにより、社会の中枢でも、これまでには見られなかったような議論が生じている」と語るのは、学界、企業、社会運動を結ぶネットワーク「ウェルビーイング・エコノミー・アライアンス」の共同創設者であるオーストラリアの政治学者キャサリン・トレベック氏だ。

トレベック氏の新たな共著書「The Economics of Arrival(到達の経済学)」では、スコットランドからコスタリカ、デンマーク、ポルトガル、アラスカに至る各地における多くのイノベーションを紹介している。

こうしたプロジェクトにおける投資機会はだいたいにおいて非常に小規模だが、複数の大手ファンドも変革の必要性を感じている。

グローバル投資マネジメント会社GMOの共同創業者であるジェレミー・グランサム氏は昨年8月、「私たちの前にあるのは、短期的な利益最大化へのフォーカスを強化し、社会的な善にほとんど、あるいはまったく関心を示そうとしない資本主義だ」と書いている。

「私たちは、自分の投資ポートフォリオや自分の孫世代だけではなく、人類という種を保護することを迫られている。さあ、始めよう」

(翻訳:エァクレーレン)

Matthew Green

[ロンドン ロイター]


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