最新記事

実験

「ホントは、マタタビよりもゴハンよりも人間が好き」──猫より

2019年4月29日(月)11時00分
松丸さとみ

graphixel-iStock

「犬は人につき、猫は家につく」という言い習わしがある。これは、犬は飼い主(人)を愛するが、猫は飼い主ではなく家に愛着を持っている、という意味で、猫は人間をそんなに好きなわけではないという考えが、まことしやかに信じられて来た。しかしこの常識が覆される研究結果が発表された。

食べ物、おもちゃ、におい、人間、どれを選ぶ?

実験を行ったのはクリスティン・ビターレ・シュリーブ氏率いるオレゴン州立大学の研究チーム。

研究チームは、猫が実際は人間とさまざまな関わり方を楽しむにもかかわらず、「社交的でもなければしつけしやすいわけでもない」という正しくない通説が通っていると指摘。猫がしつけしにくいとされているのは、しつけの際に何を動機付けとして使うべきかを私たち人間が知らずにしつけしようとしているためと考えた。

そこで、猫はどんな刺激を一番喜ぶのかを見極めるため、インディペンデントによると55匹の猫(飼い猫23匹と、動物保護施設の保護猫22匹)を対象に、4種類の刺激物(食べ物、おもちゃ、におい、人間との交流)の中から猫が最も好むものを調べた。その結果、猫は人間との交流を一番好むことが分かったという。研究結果は学術誌Behavioural Processesに掲載された。

猫好きならすでに分かっていた実験結果?

猫はまず1匹ずつ隔離した上で、2時間半にわたり4つのカテゴリー(食べ物、おもちゃ、におい、人間との交流)からそれぞれ3種類の刺激物を与えた。猫が最も好む刺激を判断するために、食べ物(鶏肉、マグロ、猫用おやつ)、おもちゃ(羽根、ネズミのおもちゃ、針金の先に厚紙のおもちゃがついた「キャットダンサー」)、におい(アレチネズミのにおい、西洋マタタビと呼ばれるイヌハッカのにおい、ほかの猫のにおい)、人間との交流(赤ちゃん言葉で話しかける、撫でる、羽根がついたおもちゃで一緒に遊ぶ)のうちどの刺激でどのくらいの時間を過ごすかを記録した。

この後、それぞれ4つのカテゴリーから猫が最も好んだ刺激物を1つずつ選び、4つの刺激物を同時に猫に与えた。この時に、猫が何を選ぶかで、その猫が何を好むかを判断した。

55匹中うまく実験をこなせたのは38匹だけだったが、ちょうど半数の19匹がほとんどの時間を人間と過ごしたという。次いで、14匹の猫が食べ物を選び、おもちゃを選んだのは4匹、においを選んだのは1匹だけだった。飼い猫か保護猫かによる違いは見られなかったという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

5年後の物価予想、「上がる」は84.8%で6年ぶり

ビジネス

インド、フィンテック会議で暗号資産とステーブルコイ

ビジネス

英アストラゼネカ、米バージニアに工場を着工 45億

ワールド

米、アルゼンチンペソ直接購入 200億ドルの通貨ス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 5
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 9
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 10
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 10
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中