最新記事

イルカ

イルカはセックスの快感を楽しんでいる?

Female Dolphins Appear to Have Sex for Pleasure

2019年4月8日(月)14時32分
カシュミラ・ガンダー

ジャカルタの水族館で泳ぐ母子イルカ Crack Palinggi- REUTERS

<イルカは人間と同様、繁殖期以外でも性行為が可能な動物であることは知られている。しかも、オーガズムさえ感じている可能性があるという調査結果が出された>

メスのイルカは性行為で快楽を感じ、オーガズムに達しているかもしれない、という研究結果が発表された。クリトリスが大きく、よく発達しているからだという。

この研究を行ったのは、米マウント・ホリヨーク大学のチーム。イルカの性行動を解明するために、自然死して浜辺に打ち上げられたイルカ11頭の死骸からクリトリスを採取、スキャナーによる検査や解剖などで詳細に調べた。

「イルカは一年中交尾する。生殖のためだけでなく、互いの絆を強化し、社会性を身に着けるために」と、同大学のダーラ・オーバック博士は語る。

「ボノボや人間など、一年中セックスする他の種は、性行為で快楽を感じることが知られている。そこで私たちはイルカも性的に快楽を味わうのではないかと思った。その疑問を解明するために、クリトリスの構造や、性的快感を経験することで知られている他の動物との比較を試みた」

今回の研究から、ヒトとイルカのクリトリスに多くの類似点があることがわかった。イルカの場合もクリトリスが敏感で、性的興奮によって充血する可能性がある。また、イルカのクリトリスには予想以上に太い神経が数多く集まっていることもわかった。この神経の束は、オーガズムを経験する他の哺乳動物よりもはるかに太かった。

形態だけではわからない

しかし、メスのイルカがオーガズムに達することができるかどうかを確認するためには、行動学的・生理学的な実験をする必要がある。

「イルカでこの種のデータを入手するのは非常に困難だ」と、オーバックは言う。「たとえば、イルカにはつま先がないので、交尾中につま先が丸まっているかどうかはわからない」

浜辺に打ち上げられたイルカから採った標本を研究するだけでは、イルカのクリトリスの機能を知るための詳細な分析は得られない、より精密な研究が必要だと指摘した。

「この研究は予備的なものにすぎないが、研究室でクリトリスの形態を調べ、オーガズムの有無を推定した数少ない研究の1つといえる。野生の脊椎動物のメスの生殖に関する形態学は、ほぼ未知の世界だ」と、オーバックは語った。

とくにイルカにまつわる謎は、当分尽きそうにない。

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中